「アニメ好き」がまさかの大活躍 毎年200人超が異動・兼業する、ソニーの公募制度がすごい:ソニーを支える人事制度【後編】(1/2 ページ)
ソニーの社内公募制度では、毎年およそ200〜300人が異動や兼業をしている。「自分のキャリアは自分で築く」という意識が根付いているという背景には、どんな制度があるのか。人事担当者に話を聞いた。
2000年代後半から14年ごろまで続いた業績不振から構造改革を終えたソニーは、15年に社内公募制度を強化する「FA制度」「キャリアプラス」「キャリア登録」を導入した。
従来の「社内募集」と合わせて毎年およそ200〜300人が希望して異動している。このように自発的なキャリア意識を持った人材が活発に社内を行き来することは、近年のソニーの好業績の土台になっているのではないだろうか。
前編はこちら
トレンドにマッチした社内兼業「キャリアプラス」
最近、兼業や副業を推奨する企業も増えてきている。
そんな中、15年に社内兼業制度の「キャリアプラス」を導入したソニーは先駆者と言えるだろう。一般的に、兼務は会社が任命する。一方、ソニーのキャリアプラスでは社外での活動と同じように、本人がやりたいことに応募して兼務できる点が特徴的だ。
兼務にかける時間の割合は30%を一応の基準としている。兼務している社員の正確な比率は算出していないが、このような制度ができる前からソニーでは兼務が多かったそうだ。
現在は累計で200人以上がキャリアプラスを利用していて、定期的に月に数件、多いときは30件ほどの新規募集があるという。
これらの制度の導入を率いた大塚康氏(ソニーグループ EC人事部 統括部長)は「完全な異動にはある種の勇気が必要ですし、受け入れる職場にとっても、それなりの覚悟と予算が必要です。そこで、もうちょっとライトに、社員の可能性と職場の足りない部分を埋めることを両立できないかと思って導入しました」と話す。
例えば、新規事業は予算が厳しいことがある。事業を継続できるかどうかもはっきりしない。多くの人が完全に異動してくると、それがリスクになる。そういった場合に、キャリアプラスを使って週に1〜2日、新規事業に時間を割くといった使い方ができる。コロナ禍でオンラインで仕事ができる環境になり、兼務はよりやりやすくなった。
「こんな時代が来るとは予想していませんでしたが、こういう時代にマッチしていくように思います」(大塚氏)
「アニメ好きの募集」に応募殺到!?
キャリアプラスを利用して、アニメ好きを募集した求人もあったという。
関連記事
- 「週休3日制」は定着するのか? 塩野義・佐川・ユニクロの狙い
コロナ禍で働き方の自由度が増す中、選択的週休3日制の導入を検討する企業が増えている。選択的週休3日制は定着するのだろうか? 導入各社の狙いはどこにあるのか? 人事ジャーナリストの溝上憲文が解説する。 - 人事改革、続けて10年──日立がジョブ型移行プロジェクトに託した「思い」
ここ数年でジョブ型という言葉をよく耳にするようになった。日立製作所もジョブ型へ人事制度を転換し始めている企業の一つ。その中で、日立が特殊なのは、ジョブ型という言葉が広まるよりもずっと前から、人事制度の改革を行っていたことだ。およそ10年前に始まったというその改革の詳細とは──? - 「日本人の魂」を買われてはならない――僕がパナソニックに行く理由
元メルカリCIO長谷川秀樹氏が、IT改革者と語る「IT酒場放浪記」。今回のゲストは、P&G、ファーストリテイリング、アクサ生命保険でCIOを務め、5月にパナソニックのCIOに就任した玉置肇氏。外資企業でキャリアを積んだ玉置氏が、歴史ある日本企業=パナソニックに入社した背景とは? そこには、熱い思いがあった──。 - 「優秀だが、差別的な人」が面接に来たら? アマゾン・ジャパン人事が本人に伝える“一言”
多様性を重視するアマゾン・ジャパンの面接に「極めてだが優秀だが、差別的な人」が来た場合、どのような対応を取るのか。人事部の責任者である上田セシリアさんに聞いた。 - 「残業しない」「キャリアアップを望まない」社員が増加、人事制度を作り変えるべきでしょうか?
若手や女性を積極的に採用したところ、「残業はしない」「キャリアアップを望まない」という社員が増え、半期の評価ごとに成長を求める評価制度とのミスマッチが起きている──こんな時、人事はどうしたらいいのだろうか? 人事コンサルタントが解説する。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.