「転職は裏切り」と考えるザンネンな企業が、知るべき真実:河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(2/4 ページ)
「お前はどこに行っても通用しない」「転職は裏切りだ」──会社を去ろうとする若手社員に、そんな言葉を投げかける企業がいまだに存在する。そうした時代遅れな企業が知らない「新入社員の3割が辞めてしまう理由」や、「成長企業できる企業の退職者との向き合い方」とは?
「大卒の新入社員のうち3割が3年以内に辞めてしまう」のも、キャリアの節目ストレスによるものと解釈できます。節目ストレスへの対処として「離職」を選択するのです。
実際、新卒3割離職はあたかも「ゆとり教育の問題」のように報じられますが、バブル期の1987年の離職率も29.3%。92年は23.7%と若干低下し、2004年の36.6%と高くなるなど多少の変動はあるものの、おおむね3割が辞めています。3年で3割が辞める状況は30年間、変わっていないのです(厚労省調べ)。
その一方で、人は利益より損失に対して強く反応するため、なかなか一歩前に進む踏ん切りがつかないのも事実です。
件のTwitterのケースでは、図らずも上司の意地悪な一言が背中を押した。もし、上司が本気で引き止めたければ、部下の曖昧な不安に寄り添う気持ちが必要でした。
ほんの一瞬でも立ち止まって考えれば、「今のお前は通用しない」と言われて、「そうですよねー。んじゃ、もっとここで頑張ります!」と答える人など、いないことが分かるはずです(上司の真意は計りかねますが……)。
いずれにせよ、日本では生産性の低さの大きな要因として「雇用の流動性の低さ」がたびたび話題となるのに、いまだに「転職=会社への裏切り」と捉える意味不明な企業や上司が存在する。
「会社を辞めたい」と切り出した途端、「誰に誘われたんだ!?」と社員たちに疑いのまなざしを向けたり、他社からの引き抜きを警戒したり、ひどい場合は「今、辞めるんだったら違約金を払え!」などと脅すケースも。「手塩をかけて育ててきたのに、今さら裏切るのか?」という思いが、ハラスメントにつながってしまうのです。
私がインタビューした人の中にも、上司から「辞めないでくれ」と懇願されため、仕方がなく退職を断念したところ、閑職に異動を命じられたケースがありました。いわば、「裏切るとこうなるんだよ」と他の社員への見せしめです。
こういった教条主義のまん延した組織があるという現実は、残念としか言いようがありません。
しかしながら、「光」もあります。
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