フジテレビ「8つの改善策」が不十分すぎるワケ 第三者委員会にも責任あり?(2/5 ページ)
フジテレビが再生・改革に向けた8つの具体策を発表した。しかし、企業再生に詳しい有識者は「不十分すぎる」と断じる。なぜなのか。
もう一つのテーマ「ガバナンス改革・組織改革」はどうか
「ガバナンス改革・組織改革」に関しては、「(5)編成・バラエティ部門の解体とアナウンス室の独立」「(6)役員指名の透明性確保」「(7)女性・若手登用」「(8)企業理念の見直し」の4項目が挙げられています。これらに関しては、元女性社員の擁護や実権者の実質長期政権化の防止など、どれも今回の問題発覚を受けた類似事象の再発防止を目的とした対症療法のイメージが強いです。従い、同種のトラブル発生時には同じ轍を踏まぬ対応を可能にするかもしれませんが、あらゆる不祥事を生まない本質的な組織風土改革に資するのかという点からは、底の浅さを感じざるを得ない印象が漂っています。
役員、役職者における女性比率の向上や若手の登用については、考え方への言及が不十分です。資料の物言いは、取りあえずの数合わせで形を作ったという印象が拭えません。企業理念の見直しについても同様で、ありきたりのお題目を並べているにすぎないかのような内容の薄さが感じられます。改革案全体の印象を一言で申し上げるなら「真の危機感を背景とした、魂のこもったものになっている」とは言い難いのではないか、と思うのです。
筆者が感じた危機感の乏しさについては、当初3月27日に発表したHDの役員人事に強く表れていました。不祥事発覚以降、組織管理の専門家らから長年実質的な経営者として君臨し、悪しき組織風土の元凶と目された日枝久取締役相談役(当時、以下同)によるその日枝支配が問題視されている中で、直系の金光修HD社長をグループの実質トップである会長として登用を続ける、という役員人事です。
第三者委員会の報告を待たずしての、日枝氏の相談役退任発表とセットでの金光氏の代表権のある会長就任という人事は、不祥事に対する危機感を微塵も感じさせないガバナンス不全を世にさらすことになったと言えます。
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