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フジテレビ「8つの改善策」が不十分すぎるワケ 第三者委員会にも責任あり?(3/5 ページ)

フジテレビが再生・改革に向けた8つの具体策を発表した。しかし、企業再生に詳しい有識者は「不十分すぎる」と断じる。なぜなのか。

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危機感の欠如が、アクティビストの付け入るスキを生んだ

 フジ・メディアHDの危機感欠如は、不祥事がいかなるものであろうとも、あるいは広告出稿の激減でフジテレビの業績が悪化しようとも、サンケイビルをはじめ継続的な安定収入が見込める不動産事業(同社の呼称では都市開発・観光事業)がグループ業績を強固に支えている(2024年3月期は営業損益の約6割を占めていました)という安心感に起因しているのではないでしょうか。

 主業であるメディア事業がつまずいても経営危機に陥る心配は皆無であり、いずれはメディア事業も回復するであろう――という甘い考えが、何の問題意識もないまま金光氏を会長に頂く人事につながったように思うのです。


甘い役員人事が、ダルトン側を怒らせてしまった(同前)

 金光氏を会長に据える人事に対しては、フジ・メディアHD株を約6%所有するアクティビストの米ダルトン・インベストメンツが即刻、強い反発を示しました。6月に予定する定時株主総会で、会社側の役員人事案に代わる株主提案を提出すると表明しています。フジ・メディアHDの出直し役員人事が、いかに非常識なものであったかがよく分かると思います。

 フジ・メディアHDはこれを受け、当初の役員改選案を取り下げて金光氏の退任を決めました。ダルトン案が新陣容にふさわしいものであるか否かは別としても、フジは思い切って自社の思惑とは離れた外部の血を投入して、根本からその風土を作り変える必要があるのではないでしょうか。

 最後に、筆者がフジの改革案に欠けていると感じる部分について、申し述べておきます。第三者委員会報告書で個人的に最も気になったことは、被害者の元女性社員がタレントから自宅での2人きりの会食を誘われたとき、断りたかったが誰にも相談できず、断れば仕事の上で自分に不利になると思って出かけた、というくだりです。無言の組織内の圧力によって「言いたいことが言えない」「断りたいことが断れない」――これは近年続発している昭和をけん引してきた名門企業の不祥事に共通する組織風土なのです。

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