フジテレビ「8つの改善策」が不十分すぎるワケ 第三者委員会にも責任あり?(5/5 ページ)
フジテレビが再生・改革に向けた8つの具体策を発表した。しかし、企業再生に詳しい有識者は「不十分すぎる」と断じる。なぜなのか。
第三者委員会にも責任がある
もちろんこの点に関しては、フジ・メディアHDだけではなく、不祥事を調査した第三者委員会にも問題があったと考えます。第三者委員会報告書では、不祥事における大きな問題点である人権問題軽視への言及に多くが割かれ、事象発生の根本原因として指摘すべき心理的安全性の欠如について、十分な問題指摘や対応策を求める記述がありません。
フジの改革案が報告書への対応をベースとしたものであると考えれば、心理的安全性確保策の欠如について同社を必要以上に責めるのは、やや酷なのかもしれません。むしろその責は、第三者委員会の報告内容にあるといえるからです。
以前、拙稿(『本当に「第三者」? 企業不祥事でよく見る「第三者委員会」に潜む問題点』)でも取り上げておりますが、第三者委員会は決して絶対的な存在などではありません。特に今回のような弁護士だけで組成されたチームでは、組織論や企業経営の専門的な視点を欠くがゆえに、本来なされるべき重要な指摘が欠落しているケースも散見されています。
これは「第三者委員会報告書格付け委員会」およびそのメンバーが、世間的に注目を集めた第三者委員会報告書に対する格付において、委員が厳しい評価を下している論点の一つでもあります。今回の報告書においても、調査における重要ポイントの欠落として指摘されてしかるべきではないかと考えます。筆者の企業不祥事研究者という立場からは、フジ・メディアHDの改革案がまだまだ魂のこもったものに至っていないという指摘とあわせて、この点についても提言として記させていただきます。
著者プロフィール・大関暁夫(おおぜきあけお)
株式会社スタジオ02 代表取締役
横浜銀行に入り現場および現場指導の他、新聞記者経験もある異色の銀行マンとして活躍。全銀協出向時はいわゆるMOF担として、現メガバンクトップなどと行動を共にして政官界との調整役を務めた。銀行では企画、営業企画部門を歴任し、06年支店長職をひと区切りとして円満退社した。その後は上場ベンチャー企業役員などとして活躍。現在は金融機関、上場企業、ベンチャー企業のアドバイザリーをする傍ら、出身の有名超進学校人脈や銀行時代の官民有力人脈を駆使した情報通企業アナリストとして、メディア執筆者やコメンテーターを務めている。
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