「ネズミ」「害虫」混入のすき家に今度は「はま寿司」で事件も……ゼンショーから逃げた客は、どこに行ったのか:長浜淳之介のトレンドアンテナ(5/5 ページ)
異物混入で世間を騒がせたすき家。グループ内の別業態でも事件が起こっており、苦境に陥っている。
すき家から逃げた客は、どこに行ったのか
視点を変えて、すき家の失われた顧客はどこに流れているのかを見てみたい。まずは直接の競合である牛丼チェーンで、3〜4月の既存店売上高と既存店客数の動きを比較してみよう。吉野家は既存店売上高が102.9%→108.0%、既存店客数96.7 %→99.8%。松屋は既存店売上高107.8%→114.2%で、既存店客数は100.9%→105.8%。
偶然かもしれないので引き続き観察を続けないと断定はできないが、吉野家と松屋はともに売り上げと客数ともにかなり伸びている。やはりすき家から顧客が流れているのではないかと、推定される。
とは言え、すき家はロードサイドが中心。吉野家と松屋は駅前が中心と立地が違うのではないかといった意見もあるだろう。同じようなロードサイドに強い丼チェーンというと、かつ丼の「かつや」はどうか。こちらも既存店売上高は102.0%から106.9%、既存店客数も97.9%→100.7%に伸びた。3月は値上げもあり顧客離れが懸念されていただけに、すき家の自滅が追い風になった可能性がある。同様にロードサイドで強いラーメンチェーンも基本的に3〜4月は成長基調だった。
すき家は強固なファンを持つ一方、一部の顧客は競合の吉野家と松屋を中心に米飯の和風ファストフード業態に相当数流れている模様だ。データからはラーメンなどにも流れているかもしれない。
成熟した牛丼の市場で長らく好調が続き、すき家のひとり勝ちとまで言われてきた状況が、まさか異物混入という自らの不祥事により顧客離れを招くとは、ゼンショーHDの経営陣も思ってもみなかっただろう。ここは派手な宣伝よりも、クレンリネスの徹底という日々の地道な積み重ねにより、信頼を回復し、同社の大目標である「フード業世界一」「世界から飢餓と貧困を撲滅」に邁進してほしいものだ。
著者プロフィール
長浜淳之介(ながはま・じゅんのすけ)
兵庫県出身。同志社大学法学部卒業。業界紙記者、ビジネス雑誌編集者を経て、角川春樹事務所編集者より1997年にフリーとなる。ビジネス、IT、飲食、流通、歴史、街歩き、サブカルなど多彩な方面で、執筆、編集を行っている。著書に『なぜ駅弁がスーパーで売れるのか?』(交通新聞社新書)など。
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