“人材戦略の失敗”は「IT部門との連携不足」から生まれる
人事部門とIT部門の間で連携が取れていない場合、人材戦略が停滞する可能性がある――こうした警告が、ある調査レポートで示されている。
人事部門とIT部門の間で連携が取れていない場合、人材戦略が停滞する可能性がある――こうした警告が、ある調査レポートで示されている。
CHROとCIOの「認識の乖離」が引き起こすもの
人材獲得の戦略的重要性について、経営幹部間で見解が大きく分かれている――人材系ソフトウェアを提供する米iCIMSが6月4日に発表した調査レポートが、こうした実態を明らかにした。
同調査によると、人事部門の幹部(CHRO)の88%が「自分たちは戦略的変革を主導している」と回答したのに対し、CIOで同様に答えたのはわずか27%にとどまった。人材獲得に対する人事部門とIT部門の認識の乖(かい)離が浮き彫りとなっている。
さらに、人事責任者の75%が「2025年には人材獲得への投資を増やす予定」と回答し、85%が「人材獲得テクノロジーは2年前よりも優先度が高い」と認識している。
しかし、こうしたHR側の意欲的な投資も、CIOやIT部門との連携が不十分であれば、施策の実行が滞り、全社的な人材戦略が頓挫する可能性があると、iCIMSは警鐘を鳴らしている。
とはいえ、人材獲得を「戦略の中核機能」として捉えていると回答した企業は全体の34%にとどまっている。約3分の1の企業は人材獲得を「支援機能」と見なしており、残る3分の1は「主に事務的・取引的な業務」と位置付けているという結果になった。
今後の展望として、HRリーダーたちは採用プロセスへのAI統合、多様性のあるタレントパイプラインの拡充、人材獲得に関する分析とレポーティングの改善を、優先事項として挙げている。
人材獲得の戦略的インパクトを経営層に効果的に伝えるには、組織の成長目標やスキルニーズと連動したゴール設定、企業業績と結びついた人材獲得指標の提示、AI活用による成果の可視化、そして投資対効果(ROI)に基づいた明確なメッセージの発信が有効である――iCIMSのレポートはこのように提言している。
例えば「採用数を30%増加させ、スピードは20%向上」といった具体的な実績は、コスト削減・ビジネスインパクト・成果の加速といった観点から、C-suite(経営幹部層)に強く響くという。
また、AIの導入は、人事リーダーにとって“最優先事項”であると同時に“懸念事項”でもある。調査では、回答者の60%が人材獲得プロセス全体でAIを活用していると答えており、より迅速かつ的確な採用が期待されている。
ただし、その実現には、適切なツールの導入、専門人材の確保、そしてIT部門との強固な連携が不可欠であるとレポートは強調している。
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