「歴史上、類を見ないほど悪質」 証拠PCはハンマーで破壊、福島の金融機関が犯した「あり得ない愚行」(2/4 ページ)
いわき信用組合が手を染めた驚愕の不祥事に関して、第三者委員会の報告書が明らかになった。いったいなぜ、このような愚行を犯してしまったのか。
監査・コンプラ部門まで不正に加担
今回の調査で判明しているだけで、ペーパーカンパニーによる迂回融資は計54回、約18億円。個人名義の借名融資は約260件に及び、X1社の月々の融資返済1700万円を含めた資金繰りに充てられていたといいます。第三者委員会の調査が認定した同信組の不正融資は、総計1293件、総額247.8億円(後述する職員個人の不正融資とその穴埋め分を含む)にものぼっているのですが、現状8億〜10億円程度の使途不明な融資金もあって、不正の全貌は今回の調査だけでは解明しきれていないのが現状です。
不正融資の新規実行は2012年に一応の終了をみているのですが、そのきっかけとなったのは東日本大震災を受けた被災地支援の一環として公的資金175億円が注入されたことでした。被災で公的支援を受けたいわき信組は、この175億円を不正融資の直接無税償却に充てるという恐るべき愚行に出ています。国民の血税である公的資金を不正の穴埋めに流用していたことは、金融機関でなくとも社会正義に反するあるまじき行為でしょう。この点だけでも、同信組におけるモラルの欠落ぶりは常識レベルを超えたものであることがよく分かります。
迂回融資、名義借用、不正な債権償却、公的資金の流用……、不正にどっぷり浸かったまま20年以上も隠ぺいし続けることは、組織ぐるみで不正を容認する体制がなければ決してできるものではありません。実際、今回の調査によって、不正関与は江尻理事長(当時)から直接指示を受けた理事はじめ、幹部職員だけでなく名義借用や融資事務手続きにおいて現場の支店長以下末端の職員までもが関わっていることが分かっています。さらには、本来業務を監視する立場であるはずの監事や監査部門、果てはコンプライアンス部門までもが不正に目をつぶるなど、驚くべき組織体制で不正実行と隠ぺいを繰り返していたのです。
3億の不正融資をした職員を雇用し続けた
組織的腐敗は、当然の如く職員個人の不祥事をも引き起こします。報告書では、組織ぐるみの不祥事横行の実情を知った一職員が、その手口をまねて約3億円もの無断借名融資を個人で行っていた事例が、詳細に報告されています。しかも信組は、X1社関連の不正融資が表になることを恐れて、本件も不正融資で穴埋めして事実を隠ぺい。職員を継続雇用するという信じ難い対応をとっているのです。
解雇を逃れた職員が再犯を犯すという最悪の事態まで招いており、組織風土は腐りきっていたといえます。報告書ではこの事案とは別に職員の現金横領事案も報告されていますが、職員へのアンケート調査結果などから他にも未調査の不祥事が相当数あると推測されています。
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