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Netflixの大規模リストラはなぜ成功した? 日本企業には真似できない大きな差レイオフ・サバイバー(2/4 ページ)

パナソニックが1万人の人員削減を発表した。リストラは、された側だけでなく、されなかった側にも大きな傷を残す。今回は、米Netflix社の成功事例を参考に、日本企業のリストラとの向き合い方を考える。

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Netflixの事例からレイオフ・サバイバー問題を考える

 レイオフ・サバイバーの問題が過去と現在で変化したのかを正確に知るには、今後の調査・研究などを待つ必要がある。しかし事例を探ると、ある程度のヒントは明らかになるだろう。

 例えば米Netflixでは基本理念に「ドリームチーム」を掲げ、高いパフォーマンスを発揮できる社員だけを雇うことを明言している。その具体的な手段として、他社と比較して最高水準の給与を支払うだけでなく、「キーパーテスト」と呼ばれる独自の習慣が実施されている。

Netflixの「キーパーテスト」とは?

 同社が一般に公開している「カルチャーメモ」によると、キーパーテストとは、管理職が部下の一人一人について「もしその社員がNetflixを離れることを希望したら、自分は必死に引きとめようとするだろうか」「今、分かっていることを採用当時に全て知っていたとしたら、この人を再び雇うだろうか」と自らに問いかけ、答えがノーであれば速やかに退職を促すというものだ。

 創業者であるリード・ヘイスティングス氏の共著『NO RULES 世界一「自由」な会社、NETFLIX』(2020年、日本経済新聞出版)には、同社が初めてレイオフを行ったときのことが書かれている。

「社員3分の1をリストラ」がNetflixにもたらした効果

 2001年、ドットコム・バブルが弾けて資金難に陥った同社は、社員の3分の1をレイオフしなければならなくなった。ヘイスティングス氏は断腸の思いでレイオフを実行し、会社を去ることになった人たちは、泣き出したり、いらだって叫んだりしたという。

 同氏は辞めさせられる社員の痛みを感じながら、“次の嵐”、すなわちレイオフ・サバイバーの問題に対しても身構えた。ところが、レイオフ直後こそ悲しそうな社員がいたものの、数週間たつと社内の空気が劇的に良くなり、「突然、情熱、エネルギー、アイデアが満ち溢れるようになった」と当時の様子が描かれている。

 レイオフが予想外のポジティブな影響をもたらした理由が、同書では「能力密度」という概念で説明されている。もともと優秀な人ばかり集めていた同社だったが、相対的に下位に分類された3分の1をレイオフしたことで、残った社員たち1人当たりの能力、つまり能力の「密度」が高まった。その結果、社員が相互に学ぶレベルが上がり、各チームがより早く多くの成果を出せるようになり、それが各自の意欲や満足度を高め、会社全体のパフォーマンスが高まったというのだ。

 この経験から、Netflixではレイオフを肯定的に捉えられるようになり、業績が好調であっても常に退職すべき人がいないかチェックするキーパーテストを推進し始めたのだ。

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