2015年7月27日以前の記事
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売り上げ世界一も“一人負け”状態 なぜ「クール」だったナイキは失墜してしまったのか(4/5 ページ)

スポーツブランドとして世界トップといっても過言ではないナイキが苦境にある。何が起こっているのか。

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理由(4):ファッションブランドを目指しすぎて「原点」を忘れた

 先のGQ誌では、ナイキ元幹部のコメントとして「スポーツに根ざしたブランドではなく、ZARAやH&Mのような、よくありがちなライフスタイルブランドを目指していた時期があった」と解説しています。

 従来の商品企画がバスケットボールやサッカー、陸上などスポーツカテゴリー別の商品開発体制だったのを一時やめて、メンズ、ウイメンズ、キッズなどのターゲット別に再編成したのです。ファッションブランドであればそれでも良いでしょうが、ナイキはスポーツブランドです。これではトップアスリートや各スポーツを楽しむ人々の満足のいく商品開発につながりません。

 その反省を生かしてか、現在はナイキのたたきあげで一時は離れていたエリオット・ヒル氏をCEOに据え、直販戦略を見直し「アスリートを全ての中心に据える」とあらためてナイキの原点に立ち返る方針を掲げています。


出所:ナイキ公式Webサイト

今こそ「原点回帰」が必要だ

 筆者は二度ほど、米国のナイキ本社を訪れたことがあります。入り口には2つの池があり、グローバルブランドとして販売先である世界の東(東洋)と西(西洋)を表しています。奥に見えるポールには、支社がある国の旗も掲揚しています。こうした光景は、海外企業でもなかなか見られないものです。


本社入口から見た建物前の噴水の場所(筆者撮影、以下同)

 写真には石畳のようなものも見えると思います。石と石の間が10センチほど開いており、案内してくれたナイキの社員は「足元をしっかり見て経営しろ」という自戒の念を込めて「あえて」間隔をあけているのだと説明してくれました。その他、社内にはナイキがアスリートのためにどのような思いで商品を作り、ナイキの商品がどんな試合結果をもたらしてきたかといった「原点」を感じる写真やポスターを多数掲示していました。


左 マイケル・ジョーダン ビル 右 タイガー・ウッズ センター 。ナイキ本社敷地内には名選手の名前をつけたビルが数多く建つ

 米国のスターバックスがそうであるように、ナイキもまた、忘れてはいけない原点、同社のカルチャーとは異なる経営に走っていたことが不振を招いたのではないかと筆者は考えています。


ナイキ本社に掲示されているブルーリボンスポーツ社の1965年のセールスレター

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