2015年7月27日以前の記事
検索
連載

売り上げ世界一も“一人負け”状態 なぜ「クール」だったナイキは失墜してしまったのか(3/5 ページ)

スポーツブランドとして世界トップといっても過言ではないナイキが苦境にある。何が起こっているのか。

Share
Tweet
LINE
Hatena
-

理由(2)あらゆるエリアで売り上げを落としている

 ナイキのエリア別売り上げを見ると、売り上げの4割以上を占める北米で10%近くも売り上げを落としているのが分かります。その他、欧州や中東、アフリカ、中国、アジア太平洋、南米という全ての地域で売り上げを落としています。中でも、今まで順調に売り上げを伸ばしてきた中国で13%以上の減少を見せているのは注目でしょう。


ナイキの地域別業績

 ナイキの不振は世界共通で、アディダスとは対照的です。売り上げの過半を占めるアパレルでは2024年度比で12%減、ナイキブランドの象徴でもあるフットウェアも約6%の減少です。

理由(3)「買いたいとき」に買えない、負のイメージ

 ナイキはメンズのストリートファッションで名を馳せ、また「ジョーダンブランド」というマイケル・ジョーダンの名を冠したブランドを立ち上げました。これらがナイキのクールなイメージをけん引してきました。

 加えて、ウイメンズやキッズのナイキも人気が出て、一躍世界のトップブランドになりました。しかし今やカテゴリー別に見ても好調部門はないに等しく、中でもジョーダンブランドの売り上げ低迷が目立ちます。

 同社のチャネル別売上高を見ると、直営店売上が13%近く減少しているのが分かります。ナイキは2000年前後に卸売り販売をある程度制限し、同社の直営店販売に注力した歴史があります。この戦略を率いたのが、2020年にナイキのCEOに就任したジョン・ドナホー氏(2024年秋に退任)です。

 EC通販大手である米イーベイの元CEOという肩書をひっさげ、EC事業強化と直営店販売の拡大、米国ではフットロッカーやアマゾンへの卸売り制限をかけました。

 筆者のクライアントである国内の某スポーツショップでは、ナイキと長年にわたり直接取り引きをしてきたものの、数年前に「世界的に直営店政策に変わるので今後は卸売りはできない」という一方的な連絡があり、仕入れができなくなった時期が続きました。世界各地で行ったチャネル改革によって「ナイキ商品は欲しいときに買えない」という印象が強まってしまったのです。

 直営店か公式のオンラインショップでしか新作を買えないという「希少性」を出そうとした戦略が、結果的にナイキの販売力を弱めることにつながった、と筆者は考えています。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ページトップに戻る