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生成AIの本当の価値は「業務削減」ではない 経営者が知るべき活用ポイントと注意点(2/3 ページ)

今や大企業でも当たり前に活用するようになった生成AI。経営者視点で、ポイントを解説する。

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「生成AIで効率化できた!」と済ませてはいけない

 生成AIだけで業務が完結するかというとそうではありません。今回のように、記事にする公共性のあるコンテンツとなると正確な数字が求められます。生成AIの文章に書いてある各種数字がどのような文献や統計データから取得したものなのか、そのN値(アンケートなどの対象母数)が記事として扱うに足る量であるか、抽出した数字が合っているか、調査時期は最新のものであるかを確認しなくてはなりません。

 今回も「ビジネスパーソンが生成AIを活用する」とAIは表現していますが、総務省情報通信白書のデータでは「個人の」と書かれています。数値についても、中国とドイツをひとくくりに40%以上としてはいますが中国は81.2%と突出して高いため、具体的数字で述べた方が良いという考えも浮かびます。日本においては20%未満と書かれていますが、実際には26.7%であり誤りです。

 このように、数字の正確性を確認し、文章を修正していると、場合によっては最初から自分で書いたのと同じくらいかそれ以上の時間を要してしまうことすらあるのです。数字などの間違いによって、企業としての信頼性を揺るがすような事態は避けるべきです。また、著作権の侵害などが起こると大変なことになりますから、確認作業は慎重に行わなくてはなりません。

 よって、骨子のヒントにする、基礎情報にする、自分が作ったものを添削してもらうなどの用途であれば良いものの、信頼性・正確性、各社ごとに細かな調整を要するカスタマイズ性が求められるときは、よりプロンプトのセンスや複数の質問による深掘りが必要になります。

 これらの作業を考慮しながら、実際に生成AIが業務削減にどれくらい貢献するのか、以下の3つのケースで計算してみました。

 (1)は、前述した記事の作成時間です。

 (2)は、ある企業が評価制度を刷新する際、新しい等級定義を20の部署、10段階の等級、3つの評価軸(20×10×3=600項目)で初案を作成した場合を想定しています。

 (3)については、楽天モバイルが生成AIで実際に削減できた業務時間を公表しており、そのデータをもとに計算をしました。

 図を見ると、おおよそ40〜50%の業務削減効果があることが分かります。業務削減以上もそうですが、それによってビジネスのスピードが速まると考えれば、大きな事業価値につながるのではないでしょうか。

 例えば、本来半年かかっていたものが3カ月で出来上がることは社内の制度改革においても、社外向けサービス開発においても、スピードという大きな価値を創出することになります。経営者視点で見れば「社員の業務が効率的≒楽になる」よりも「事業のスピードが上がる」という価値の方が投資判断がしやすいことでしょう。

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本記事は制作段階でChatGPT等の生成系AIサービスを利用していますが、文責は編集部に帰属します。

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