なぜ日本のチェーンは「中国市場」を攻略しきれないのか 吉野家、サイゼに立ちはだかる「1000店舗の壁」(1/3 ページ)
巨大な市場を夢見て、これまで日本の外食チェーンが続々と海外に進出してきたが、なかなかブレークできていない。その要因は何か。
著者プロフィール
山口伸
経済・テクノロジー・不動産分野のライター。企業分析や都市開発の記事を執筆する。取得した資格は簿記、ファイナンシャルプランナー。趣味は経済関係の本や決算書を読むこと。 X:@shin_yamaguchi_
サイゼリヤ、餃子の王将、くら寿司……日本の外食チェーン各社は“巨大な胃袋”を目当てにこれまで中国市場へと進出していった。
吉野家は1992年に進出し、現在は北京を中心に500店舗以上を展開する。サイゼリヤは2003年に上海で海外初店舗を構え、本土全体で500店舗を超える。2023年8月期には、物価高でサイゼリヤの国内事業が14億円の赤字となったものの、アジア事業で84億円の利益を叩き出し、赤字を補填(ほてん)した。
とはいえ、こうした成功例は一握りにとどまる。例えば餃子の王将は撤退に追い込まれ、7月にはくら寿司が中国本土に展開する3店舗を年内に閉店すると発表した。人口が多くても一筋縄ではいかないのが、中国市場である。
「くら寿司」は撤退を決めた
くら寿司は2025年4月末時点で全685店舗を展開し、その内73店舗が米国、59店舗が台湾にある。中国本土には2023年6月に進出し、当初は100兆円の外食市場を狙って10年間で100店舗を展開すると発表していた。だが、4月末時点では上海の3店舗しかない。
多店舗展開には至らず、直近では中国撤退も発表した。現地顧客のニーズをつかめなかったうえ、原材料費の高騰も影響したという。中国経済の悪化も影響したとみられる。現地では2年間で累計11億円の損失を計上した。
中国はスシローが先に2021年に出店している。既に70店舗を超え、繁忙期には300組以上の行列待ちになるという。スシローは「生ものが苦手」という中国人の嗜好(しこう)に合わせ、加熱した商品を増やして現地化を進めた。1皿単価も、くら寿司の12元(250円ほど)に対してスシローは10元(200円ほど)であり、不景気下の現地において、価格差も影響したと考えられる。
そもそも中国では現地企業が運営する「N多寿司」なるチェーンが3000店舗以上あり、シェアトップの座にある。商品は巻き寿司やエビフライなどの揚げものが多く、日本人が見慣れたネタは少ない。実際に食べた日本人によるレビューは批判的なものが多く、N多寿司はかなり現地化していることがうかがえる。店舗もフードコート内や小さいカフェ形式のこぢんまりとしたものが多い。
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