Sansanはなぜ、AI活用を「人事主導」で進めるのか AI利用は8割超え、業務時間9割削減の事例も(1/6 ページ)
生成AI導入を進める中で「導入したものの一部の社員しか使っていない」「業務にどう生かせばいいか分からない」といった声は後を絶たない。そんな中、Sansanは社員の99%が一度はAIを活用し、8割以上が日常的に使用するという成果を生み出している。その秘訣は、IT部門ではなく人事部門が主導するアプローチにあった。
ChatGPTの登場から2年半以上が経過し、多くの企業が生成AI導入に踏み切る一方で「導入したものの一部の社員しか使っていない」「業務にどう生かせばいいか分からない」といった声は後を絶たない。ツールはそろえたが、組織に浸透しない。そんな悩みを抱える企業は少なくないだろう。
こうした中、2025年1月に「AIファースト」を全社方針として掲げたSansanは、わずか3カ月で社員の99%が一度はAIを活用し、8割以上が日常的に使用するという成果を生み出している。その秘訣は、IT部門ではなく人事部門が主導するアプローチにあった。
同社の人事本部 Employee Success部 副部長の野村稔氏とBill One事業部 マーケティング部 コンテンツプランニンググループの西家達規氏に、AI活用を組織文化として根付かせる方法を聞いた。
人事部門が主導して生成AIを根付かせたSansanに秘訣を聞く(左からBill One事業部 マーケティング部 コンテンツプランニンググループの西家達規氏、人事本部 Employee Success部 副部長の野村稔氏)
個人の努力に依存しない、組織としてのAI活用を推進
「実は明確な数値目標は置いていないんです」
AIファースト宣言の狙いについて聞かれた野村氏の答えは意外なものだった。具体的な目標を掲げる企業が多い中、Sansanのアプローチは異なる。
「まず使ってみて、それが何なのかを理解することが大事なんです。AIが2年後どうなっているか、正確に答えられる人はいないと思います。そんな状態で『何%削減』のような数値目標を置くことの重要性は、そこまで高くないはずです」(野村氏)
しかし、数値目標がなくとも成果は着実に現れている。4月に実施した社内アンケート(927人が回答)によれば、生成AIの活用率は99%に達し、82%が「ほぼ毎日」活用しているという。さらに98%が「仕事の質が向上した」、71%が「1日当たり30分以上の時短を実感」という具体的な成果も見えている。
この高い活用率を実現した背景には、まずトップメッセージによる意識改革があった。
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