2015年7月27日以前の記事
検索
連載

定食チェーンの雄「大戸屋」と「やよい軒」、なぜ店舗数が頭打ちに? カギを握る要素とは(3/3 ページ)

定食チェーンとしてしのぎを削る大戸屋とやよい軒だが、近年は店舗数が伸び悩んでいる。今後、成長を目指す上でカギを握る要素とは何なのだろうか。

Share
Tweet
LINE
Hatena
-
前のページへ |       

出店地域で見る両者の違い

 両者の違いは出店地域でも見られる。

 大戸屋は現在、国内で313店舗を展開しており、そのうち過半数が首都圏に集中している。2020年3月期末時点では約350店舗を展開していたが、コロナ禍で閉店が相次いだ。

 やよい軒も、コロナ禍前の約380店舗から現在では360店舗まで減少した。地域別では、首都圏の1都3県に100店舗ほどあり、全体の約3割で集中度は小さい。愛知や大阪、福岡にも数十店舗と、大戸屋よりも広めに出店している。運営元のプレナスは九州出身の企業であり、前身のめしや丼が福岡市に1号店を構えたことが関係しているのだろう。

 価格でいえば、前述の通りやよい軒の方が150円程度安い上に、ご飯のおかわりが自由である。やよい軒は出費を抑えたい地方のニーズを押さえたといわれており、価格差が出店地域の差に影響したと考えられる。1000円以下のメニューがそろうやよい軒と比較し、大戸屋は定食のほとんどが1000円以上だ。外食では「1000円の壁」が一つのハードルであり、今後も大戸屋の進出地域は自ずと限られそうだ。


やよい軒の「味噌かつ煮定食」は990円だ(出所:同チェーン公式Webサイト)

FC加盟店の満足度がカギを握る?

 プレナスは2022年にMBOを実施した。上場を続けていると少数株主の意見を考慮する必要があるため、不採算店の閉鎖や改革を迅速に進める狙いがあったとみられる。MBO発表時の資料においてプレナスは、店舗資産を貸し付けてオーナー側の出店費用を抑える「ユニットFC制度」を活用し、やよい軒で800店体制を目指すと発表していた。しかし、その後はむしろ店舗数が減少している。海外店舗数も約250店舗で頭打ちとなった。


チキン南蛮定食も990円で1000未満に抑えられている(同前)

 FC比率4割の大戸屋も、新規出店には苦戦している。同じ定食屋業態では、フジオフードシステムが運営する「まいどおおきに食堂」もここ数年でFCの退店が相次ぎ、大幅に店舗数を減少させた。加盟店が集まらないのは、よりもうかりそうな他業態があるためだ。メニューの絞り込みによる店舗負担の低減や収益改善など、加盟希望者にとって魅力的な施策を打ち出せなければ、定食業態各社は今後も苦戦を余儀なくされるだろう。

著者プロフィール

山口伸

経済・テクノロジー・不動産分野のライター。企業分析や都市開発の記事を執筆する。取得した資格は簿記、ファイナンシャルプランナー。趣味は経済関係の本や決算書を読むこと。 X:@shin_yamaguchi_


Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

前のページへ |       
ページトップに戻る