“失われた30年”は本当に失われたのか 個人が手にした3つの自由:2040年の人材ビジネス大予測(5/5 ページ)
「失われた30年」は雇用の硬直を壊し、キャリア・時間・自己実現の“3つの自由”をもたらした。人材ビジネスの未来を読み解く。
このような変化に対応するため、先進的な企業では「オープン&クローズ戦略」を採用しています。コア人材は長期的に育成しながら、専門性の高い人材は外部から柔軟に採用するという考え方です。グーグルやアップルといったグローバル企業も、この戦略で大きな成功を収めています。
特に注目すべきは、この戦略が具体的な数字となって表れている点です。外部人材の積極採用を行っている企業は、そうでない企業と比べて、イノベーション創出率が約40%高く、収益性も平均して15〜20%高いというデータが存在します。
さらに、人材の流動化は、企業文化の革新ももたらしています。
異なるバックグラウンドを持つ人材の交流により、「当たり前」とされていた慣習や思考パターンが見直され、より効率的で創造的な企業文化が育まれているのです。実際、人材流動性の高い企業では、従業員1人あたりの特許出願数が、業界平均の1.5倍以上という調査結果も出ています。
終身雇用制度の終焉は、決して「失われた何か」ではありません。それは、個人と企業の双方に、新たな可能性をもたらす変化といえるものです。この変化を前向きに捉え、戦略的に活用できる人材・企業こそが、これからの時代を勝ち抜いくことになります。
黒田真行:
ルーセントドアーズ株式会社 代表取締役
1988年株式会社リクルート入社。2006年から8年間、転職サイト「リクナビNEXT」編集長、株式会社リクルートキャリア HRプラットフォーム事業部部長、株式会社リクルートドクターズキャリア取締役などを歴任。2014年ルーセントドアーズ株式会社を設立し、35歳以上専門の転職支援サービスを運営。また、HR業界のベンチャーから大手まで、30社を超える「求人サイト」「転職エージェント」の成長戦略コンサルティングを展開。主な著書に『採用100年史から読む 人材業界の未来シナリオ』(クロスメディア・パブリッシング)などがある。
神宅謙一郎:
WaGaGoToプランニング 代表
1992年株式会社リクルートフロムエー(現リクルート)入社。関西、東海、関東、ローカルエリアの営業企画を18年間担当。「フロム・エー ナビ」「はたらいく」の新規求人メディアの立ち上げに従事。最大期は札幌から鹿児島までの26拠点を旅芸人的に担当。2015年4月から5年間、ツナグ働き方研究所主任研究員として求人サービス、HRテックサービスの分析と比較を行う。2020年4月に独立し、WaGaGoToプランニングを設立。「#求人ツッコミニスト」でSNS発信を行うほか、求人サービス援護会会長、採用パーソナルトレーナーとして活動。
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