「応募10倍」は本当に可能? 中小企業のSNS採用活用法(3/3 ページ)
就活生747人を対象とした調査では、選考に進む際に最も重視するのは「会社の雰囲気」であることが分かった。では、それを伝えるにはどうすれば良いのか。「求人広告」ではない“ある手法”が、今後の人材採用の鍵となるかもしれない。
採用におけるSNS広告のメリットとデメリット
採用におけるSNS広告活用のメリットは3点ある。
1点目は、応募数の増加だ。人手不足が深刻な建設業界のある企業では、求人広告のみで採用活動を行っていた時期と比べ、応募数が10倍以上に伸びた。顕在的な求職者だけでなく、本格的に転職活動を行っていない人にも自社を認知してもらい、関心を持ってもらえたことが、新たな応募につながった。また、広告をクリックするだけで応募ページへ移動できるため、離脱が少なく、応募してもらいやすいというメリットもある。
2点目は費用対効果だ。SNS広告を使用したことで、求人媒体に比べ採用費を約3分の1、エントリー単価を最大10分の1にまで圧縮できたケースもある。ここで強調したいのは、低コストで効果を得られることではなく、応募の母数を広げられるメリットがあるという点だ。
求人広告は訴求先が求職者に限定されるため、一定の水準を超えると、投資額を増やしても応募数が伸び悩む。一方で、SNS広告は求人媒体では補うことができない潜在層も含めた幅広い層にアプローチができる。つまり、SNS広告は広範囲の母集団に訴求できるため、投資額に上限を設ける必要がなく、より大きな成果が期待できる。
そして3点目はスピード感だ。求人広告では掲載準備や校正に時間を要するのに対し、SNS広告は設定後、すぐに配信を開始できる。
求人広告では応募がほとんど集まらなかった介護業界のある企業は、SNS広告を実施後、わずか1カ月で135件の応募を獲得した。InstagramやTikTokといった日常的に利用されているSNSを活用することで、短期間で多くの露出を実現し、応募数を増やせた好例といえる。
さらに、SNS広告の場合、配信直後からクリック数や応募数のデータを取得できるため、成果を見ながら即座に改善・対応することができる。つまり、配信前から配信後まで、一貫してスピード感のある運用が可能なのだ。
SNS広告にはこうした魅力がある一方、当然ながらデメリットも存在する。
まず、AIによる自動のターゲティングは必ずしも精度が高いとは限らず、運用の初期段階では意図しない層からの応募が発生する可能性がある。継続的な配信により学習が進めば精度は向上するため、一定期間は試行錯誤する必要がある。
また、ユーザーによっては広告感を強く感じ、情報を避けるようになるリスクも存在する。そのため、デザインや編集の工夫も必要だ。
デメリット回避のためにできることは?
ただ、通常のSNS運用とSNS広告を併用することで、こうしたデメリットは回避できる。例えば、広告で目を引くデザインや内容に興味を持った人が、アカウントを訪れて過去の投稿をざっと確認したとする。その際、日々の発信から伝わる社内の雰囲気や価値観が「この会社で働いてみたい」という気持ちにつながり、応募を後押しするのだ。
SNS運用で長期的なブランディングを行いながら、SNS広告で即効性のあるアプローチを行うこと。これにより相乗効果が生まれ、より確度の高い採用につなげられる。
求人広告やSNS運用を行いながらも、採用活動に課題を感じている企業にとって、SNS広告は次なる一手となり得るだろう。
著者プロフィール:高田桂太郎
株式会社リソースクリエイション 代表取締役 CEO
1985年東京生まれ。2015年4月1日に株式会社リソースクリエイションを設立し代表取締役に就任。1000社以上の採用コンサルティングを担当。長年築き上げた採用に関するノウハウを生かして、SNS採用マーケティング「エアリク」を展開。自社のSNS総フォロワー数は150万人超え、総再生回数は10億回を突破。
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