これからの生成AI時代、「静かな退職」実践者に待ち受けるリスクとは?:石角友愛のキャリアコンパス(3/3 ページ)
必要最低限の仕事だけをこなす働き方「静かな退職」を選択する人が増えています。しかしこれからのAI時代において、「静かな退職」はキャリアの選択肢として持続できるのでしょうか。
AI時代のキャリアデザイン、どう考える?
それでは、AI時代にはどのようなキャリアデザインが求められるのでしょうか。自著である『AI時代を生き抜くということ ChatGPTとリスキリング』(日経BP)を参考に、ポイントを紹介します。
まずは、自分がこれまで培ってきた業務領域固有の専門知識や経験=ドメインスキルを可視化してみましょう。これは単なる資格のリスティングではありません。「自分はどの業務で強みを発揮できるのか」「どのような仕事に貢献できるのか」を改めて把握するステップです。
「どんなものをリスティングすればよいか分からない」という方は上記の表を参考にしてみてください。リスティングするべきものは、何も資格(ライセンス)である必要はありません。自身が仕事で培ってきた経験を客観的に評価してみてください。リスティングされた経験・スキルは、キャリアデザインの基盤となります。
次に、スパイクスキルが何であるかを明らかにしていきます。スパイクスキルは、他の人にはない独自の強みで、既存のドメインスキルと掛け合わせることで相乗効果を生み出します。例えば、AIやデータ管理のスキルと、マーケティング力や語学力を組み合わせることで、「国際的な営業スキル」という強みが見つかります。
AI時代のキャリアデザインには、自分のドメインスキルを客観的に整理したうえで、具体的なスパイクスキルを掛け合わせて自身だけの強みを明らかにし、労働市場や職場の変化に適応していくことが重要となります。
まとめ
静かな退職は、ワーク&ライフのリバランスやキャリア維持の一形態として評価される場合もあります。しかし、AI時代には必要最低限の業務は自動化されやすく、静かな退職はキャリアリスクを高めることにつながりかねません。静かな退職を続けるにしても、その「最低限」を単純作業に限定してしまえばAIに代替され、キャリアは停滞します。最低限の仕事を「単調な作業」ではなく、「自分の強みを発揮できる業務」へとシフトしていくことが求められます。
著者プロフィール:石角友愛(いしずみ・ともえ)
パロアルトインサイトCEO/AIビジネスデザイナー
2010年にハーバード・ビジネス・スクールでMBAを取得した後、シリコンバレーのグーグル本社で多数のAI関連プロジェクトをシニアストラテジストとしてリード。その後HRテック・流通系AIベンチャーを経てパロアルトインサイトをシリコンバレーで起業。東急ホテルズ&リゾーツのDXアドバイザーとして中長期DX戦略への助言を行うなど、多くの日本企業に対して最新のDX戦略提案からAI開発まで一貫したAI・DX支援を提供する。2024年より一般社団法人人工知能学会理事に就任。
AI人材育成のためのコンテンツ開発なども手掛け、順天堂大学大学院医学研究科データサイエンス学科客員教授(AI企業戦略)及び東京大学工学部アドバイザリー・ボードをはじめとして、京都府アート&テクノロジー・ヴィレッジ事業クリエイターを務めるなど幅広く活動している。
毎日新聞、日経xTREND、ITmediaなど大手メディアでの連載を持ち、 DXの重要性を伝える毎週配信ポッドキャスト「Level 5」のMCや、NHKラジオ第1「マイあさ!」内「マイ!Biz」コーナーにレギュラー出演中。「報道ステーション」「NHKクローズアップ現代+」などTV出演も多数。
著書に『AI時代を生き抜くということ ChatGPTとリスキリング』(日経BP)『いまこそ知りたいDX戦略』『いまこそ知りたいAIビジネス』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『経験ゼロから始めるAI時代の新キャリアデザイン』(KADOKAWA)、『才能の見つけ方 天才の育て方』(文藝春秋)など多数。
お問い合わせ、ご質問などはこちらまで:info@paloaltoinsight.com
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