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“静かな退職”は悪じゃない なぜ「日本人は休めない」のに「生産性が低い」のか河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(1/3 ページ)

一時期に比べれば、日本の長時間労働もやっと改善され、残業を美徳とする社会の風潮も薄れました。しかし一方で、いまだに「うまく休めない問題」は解決されていません。

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著者:河合薫

東京大学大学院医学系研究科博士課程修了。千葉大学教育学部を卒業後、全日本空輸に入社。気象予報士としてテレビ朝日系「ニュースステーション」などに出演。その後、東京大学大学院医学系研究科に進学し、現在に至る。研究テーマは「人の働き方は環境がつくる」。


 サラリーマンは日本経済を支えるために、会社を最優先させる生活を営んでいる。彼らは死ぬほど働いたあとには、顧客や同僚たちとの長々と酒を飲む。毎日、短い睡眠時間をとり、通勤ラッシュにもまれながら出社。仕事時間は平均13時間で、会社を出るのは深夜11時だ。最終電車に間に合うように駅まで猛ダッシュする。次の日も、次の日も、そして次の日もそれを繰り返すのである。

 これは2015年3月9日、CNN moneyに掲載されたコラムに描かれた日本の会社員の“日常”です。

 この頃に比べれば、日本の長時間労働もやっと改善され、残業を美徳とする社会の風潮も薄れました。しかし一方で、いまだに「うまく休めない問題」は解決されていません。

なぜ「日本人は休めない」のに「生産性が低い」のか

 「残業をしないことに罪悪感がある」「有給を取りまくる部下につらくあたってしまう」「会社から5日間の有給を強制的に取らされたが、最後の2日間は家で仕事をしてしまった」「休む前は、仕事のことは絶対に考えない! と決めたのに、Slackやメールが気になって毎日チェックしてしまった」――などなど、ぼんやりできない人が少なくありません。

yasumu
提供:ゲッティイメージズ

 有給休暇の取得率を高めるため、国は2018年に労働基準法を改正し、有給休暇5日分に限り、その取得時期を労働者ではなく使用者が指定できる「時季指定義務」を導入しました。「周りに迷惑が掛かるのではないか?」と気兼ねして休暇をためらう人を、強制的に休ませ取得率を促進させるためです。

 しかしながら、厚生労働省の調査によると2023年の平均有給消化率は65.3%です。過去最高といえども欧米に比べるとまだまだ少なく、米旅行予約サイト大手のエクスペディアの「世界11カ国・地域の有給休暇に関する調査(2023年)」でも日本は最下位です。米国(92%)、ドイツ(93%)、フランス(94%)などに比べ、わが国は63%。日本に次いで取得率が低いニュージーランドでも86%です。

yasumu
2023年の世界11地域における有給休暇の取得状況(エクスペディアのプレスリリースより引用)

 制度の違いがあるので単純比較はできませんが、日本人は病欠をする割合も3日程度と少ない。経済協力開発機構(OECD)がまとめた世界各国の年間の病欠日数によると、トップはドイツの24.9日、オランダが15.0日、フランスは14.2日です。

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