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ロボット活用は日本の小売業でも進むか 企業が“及び腰”になってしまう根本理由(2/3 ページ)

米国ではAmazonやウォルマートなどでロボットの活用が進んでいるが、日本もそこに続けるのか。課題を探る。

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 米国で棚在庫の可視化をリードしてきたSimbe Robotics社では、2020年に在庫管理ロボット「Tally3.0」を発表しました。その要点と成果は下記となります。

  • 70センチ以上離れた場所からデータの読み取りが可能
  • 認識精度は99%
  • データ処理性能を強化、シームレスな在庫状況の確認が可能に
  • 在庫切れ検知率は手動の10倍以上
  • 在庫切れ商品が平均20%減少
  • データ改善により年売上高が2%上昇


Simbe Roboticsの「Tally」(出所:同社公式Webサイト)

 業務改善効果のみならず、売上高も上昇しています。これは2020年時点ですから、米国の各小売企業がさらに実績を積み重ねて次のステージを構想していることは想像に難くありません。

 日本の小売企業が米国のテクノロジー事例を追うような形で発展していくことが多い中、ロボット活用ではファーストリテイリングやイオン、楽天、パルコ、セブン-イレブン・ジャパン、ヨドバシカメラなどが世界の動きと同時並行でロボット活用を積極推進しています。

 米国と比べて国土や店舗面積がコンパクトな日本において、ラストワンマイルの配送や店内のロボット活用は、より実現性や利便性が高いことが予想されます。ロボット活用は次の5つに用途を整理できます。

(1)店舗運営・顧客サービス:

接客・案内(フロアガイド、商品検索、対話ロボット)、顧客体験演出(イベント・デモンストレーション、マーケティング支援)、多言語・ユニバーサル対応(外国人/障がい者対応)

(2)棚卸・在庫管理(店舗在庫可視化):

棚スキャン(欠品・誤陳列・ラベルチェック)、自動棚卸(カメラ/RFID連動)、データ連携(在庫精度向上→発注補充最適化)

(3)倉庫・バックヤード(サプライチェーン効率化):

搬送・仕分け(自動運転による自動搬送/ソーティング)、ピッキング支援(協働ロボットやアーム型ロボット)、入出庫・保管最適化(自動倉庫システム、在庫ロケーション管理)

(4) 配送・ラストマイル:

自動配送ロボット(店舗周辺での商品配送/EC経由発注・店舗在庫配送)、ドローン配送(短距離・即時配送)、ピックアップ支援(カーブサイド/ロッカー無人受け渡し)

(5) セキュリティ・監視(安全・環境管理含む):

警備・監視ロボット(店舗巡回、不審者・不審物検知)、清掃・除菌ロボット(床清掃、衛生管理)、環境管理(空調・照明・火災検知などのセンサー連動)


ロボット活用における3つの課題

 これらの用途でロボットを導入し、業務効率とコストメリットを実現するにはいくつかの課題があります。

(1)ROIの適正な算出

 投資対効果を明確にしなくては、ロボットに対する投資決断に踏み切れないことがあります。しかし、業務時間を算出し、ロボットがそれを代替する効果を計算しても、実際には人を解雇できるわけでもなく、また一部の業務だけを削減したからといって人件費が安くなるわけでもありません。業務時間を人件費に換算する方法は形式的なものでしかないのです。

 ECや店舗への宅配注文の増加で売り上げと利益が増える想定もできますが、これも「来店するはずだった人」がスライドしたのかどうかを明確にできず、不明瞭さを残すことになります。

 よって、投資決断がしやすいのは、人が介在しないような、到底処理が不可能なくらいの膨大なデータや物量を処理する領域です。そのような領域にロボットを活用すると、新たな領域への人的リソースの集中や、新規採用コストを抑えることにつながるからです。

(2)法規制や安全基準のクリア

 公道におけるスピード順守、遠隔監視・操作、天候・道路環境・時間等の条件設計、AIカメラを搭載している場合のデータプライバシーなど、ルールをクリアできる技術と運用体制が求められ、このための開発投資や人材コストも加味することが必要になります。

(3)既存システムとの統合

 既存の倉庫管理システム、輸配送システム、受注管理システムなどと統合し、かつリアルタイム連携することが求められるため、この整備にも投資と時間を要することになります。これを実現しなくては、実験店舗の範囲では良好な成果と運用ができたとしても、数百、数千店舗へと拡大していくスケーラビリティにおいて課題を抱えることになります。

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