スシロー136%高、ココイチ6%安――外食株、“明暗の分かれ道”は?
外食関連株の株価パフォーマンスで明暗が分かれている。物価高の中でも客数を維持しつつ海外展開を積極的に進める銘柄のパフォーマンスが堅調となる一方、値上げ後に客数の減少が目立つ企業の株価は伸び悩むなど、投資家の選別が進んでいる。
外食関連株の株価パフォーマンスで明暗が分かれている。物価高の中でも客数を維持しつつ海外展開を積極的に進める銘柄のパフォーマンスが堅調となる一方、値上げ後に客数の減少が目立つ企業の株価は伸び悩むなど、投資家の選別が進んでいる。
海外展開が奏功 「スシロー」年初来136%超高
外食株の中でもパフォーマンスの堅調さが目立つのが回転寿司「スシロー」を展開するFOOD&LIFE COMPANIESだ。同社株は年初来136%超高で、他の銘柄と比較してパフォーマンスが群を抜いている。ラーメン屋「一風堂」を手掛ける力の源ホールディングスも同60%超高と、株価は堅調だ。
マネックス証券のチーフ・ストラテジスト、広木隆氏は、人口が減少する国内だけで事業展開をするのは厳しく、「以前から海外展開を積極的に進めてきた企業は投資家の評価も高い。日本よりも海外の方が単価を上げられることもポイント」だと指摘する。
スシローの海外店舗は212と、同じ回転寿司のくら寿司の135、かっぱ寿司の8より多い。一風堂は140で、同じくラーメン店を展開するギフトホールディングスの33の4倍以上となる。
客足維持できたスシロー、伸び悩む壱番屋
市場では、月次統計で重視されるのは、既存店売上高よりも「客数」とされる。値上げを発表した後、客単価の伸びは維持できていても、客数が減少しているブランドの評価は落ちてしまうとの指摘が聞かれる。
立花証券のアナリスト・千葉明弘氏は「多くの企業がここ1〜2年で値上げを発表しているが、だんだん客数の差が現れている。客足が落ち込んでいる企業は、先々の業績への懸念から買いは入りにくい」と話す。
スシローは、今年に入ってからの客数は前年比プラスを維持している。対照的なのは壱番屋で年初来、客数の前年割れが続き、株価は同6%安と伸び悩んでいる。
同社は2024年8月、ベースカレーなどの価格を平均10.5%引き上げたほか、トッピング価格も平均13.5%値上げした。
いちよし経済研究所のアナリスト・鮫島誠一郎氏は「人によっては、ラーメンやカレーは1000円まで、牛丼は500円まで、といったラインはあるだろう」と指摘。消費者それぞれによって感覚が異なるため、一様に線引きするのは難しいが「価格に敏感な客層は、コンビニや自炊など他の選択肢に流れてしまうのではないか」と話す。
総務省が公表する家計調査では、今年に入ってから2人以上世帯の「外食支出」は前年比プラスの月が多いものの、足元2カ月では前年割れとなっている。
第一生命経済研究所の首席エコノミスト・永濱利廣氏は「外食はある種、『非日常』的な支出にあたるため、目先の消費も底堅いのではないか」との見方を示す。
マネックス証券の広木氏も「単なる食事にとどまらない、回転寿司などエンタメ性のある業態は需要が底堅いのではないか」と話している。
ただ、「インフレ下で値上げはある程度受け入れられているものの、『これ以上値上げされるときつい』と考える消費者も増えてきているのではないか」(立花証券・千葉氏)との見方もある。
多角戦略が投資家の信頼を獲得
客数と併せて評価のポイントとなるのが、ビジネスモデルを積極的に拡大できているかどうかだ。大和証券のチーフアナリスト・津田和徳氏は「ゼンショーホールディングスは海外M&Aを積極的に展開しており、他の外食企業とは異なるマネジメント能力が評価されやすい」との見方を示す。
同社は2019年、マレーシアのチキンライス専門店を子会社化したほか、2023年には北米や英国ですしチェーンを手掛けるスノーフォックス・トップコを買収した。
国内市場の人口減少を背景に「海外展開は成長戦略の鍵となるため、積極的に海外展開を進める企業は投資家にとって安心感がありそうだ」(津田氏)という。
単一ブランドだけではなく、知名度の高い「スターブランド」を複数持つことも重要だ。「焼き肉きんぐ」や「丸源」、「ゆず庵」などを展開する物語コーポレーションは、焼肉カテゴリーの1〜6月の客数が5月を除いて前年割れとなったが、ラーメンやしゃぶしゃぶのチェーン店は客足が好調で、株価は年初来26%超高となっている。一つの事業で売り上げが落ちても、他の業態でカバーできる強みがある企業に投資家の食指が動きやすいという。
人件費の上昇やコスト高で外食株を取り巻く外部環境の厳しさが銘柄選別を促しているといえる。環境面が外食企業全般に恩恵をもたらすような改善がみえて全体が底上げされてくるまで「選別は進みそうだ」(立花証券・千葉氏)という。

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