生成AIに仕事を取って代わられる? 従業員の不安感、みずほFGはどう解消するのか 上ノ山CDOに聞く(1/2 ページ)
みずほフィナンシャルグループは生成AI活用と人的資本経営の実現を両軸で進めている。銀行業態を展開する同社だが、窓口業務や店舗スタッフの役割は、生成AIの利活用によってどのように変化すると見通しているのか。「AIに仕事を奪われるのでは?」という議論もある中、みずほグループの考えを、執行役常務グループCDO 上ノ山信宏氏に聞いた。
生成AI活用を重要な経営課題と定め、議論を進めているみずほフィナンシャルグループ(以下、みずほグループ)。同社は現在4つの注力領域を定め、集中的に資源を投下している。
銀行業態を展開する同社だが、窓口業務や店舗スタッフの役割は、生成AIの利活用によってどのように変化すると見通しているのか。「AIに仕事を奪われるのでは?」という議論もある中、みずほグループの考えを、執行役常務グループCDO 上ノ山信宏氏に聞いた。
関連記事:生成AIで「金融の価値」はどう変わる? みずほFGが挑む、100年先を見据えた経営改革
頭取自らエージェント作成も 今はアーリーアダプターを増やす段階
現在みずほグループは以下4つのテーマを経営戦略の中期的な注力テーマと定め、ヒト・カネといった資源を集中的に投下。これらにアラインする5つの領域をAI活用の重点領域として選定し、徹底的なAI化を進めているという。
(1)顧客の利便性を上げていくこと
(2)資産所得の倍増に資するサービスを提供すること
(3)日本企業の競争力強化を支援すること
(4)世界で通用する金融サービスを提供していくこと
現在の進捗について上ノ山CDOは「まだAIで遊んでいる段階。でも、今はそれでいいと思っている」と語り、生成AIを活用する前段階として、サービスを知り、触り、試すことの重要性を強調した。
併せて同社が注力するのが、人材育成である。
これまで、社員全体のスキルを底上げするための取り組みをさまざま提供してきた。スキル検定やデータサイエンティストの育成・発掘を目的としたコンペを実施。「エージェント」「LLM」など個別のテーマを設けた勉強会を開催したときには、全社で1000人以上が参加希望を出すなど、社員の関心は高い。
本社業務に限らず、各店舗でも実際に生成AI活用事例が出てきた。例えば、社内向け生成AIツール「Wiz Chat」を活用し、店舗の「受付」と「カウンター」の間の情報連携を効率化するプロンプトを作成したり、顧客への提案準備をする際に想定QAの壁打ちに生成AIを活用したり。「年末年始のお客さまへのごあいさつのルートを、生成AIを活用して効率的に組んでいる店舗もあった」という。
上ノ山CDOは「こういったアーリーアダプター(早期導入者)を増やしていきたい」と話す。
「アーリーアダプターが出てきているのはすごく良いこと。これを同心円的に広げていくため、社内PRを強化し、従業員の『世の中がこんなに変わっているからこそ、自分もやってみようかな』という意識を醸成していきたいです」
社内向けのSNSを運用し、各社員が独自で作ったプロンプトを“自慢”できる環境を整えたり、同社が提供するAIツール「Wiz Chat」の使い方相談や最新のAIツールを体験できる場「DXカフェ」を、出張形式で各地で開催したり、さまざま取り組みを強化する。
最近では、みずほ銀行の頭取である加藤勝彦氏が自らAIエージェントを構築。その様子を動画で社員に配信した。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
生成AIで「金融の価値」はどう変わる? みずほFGが挑む、100年先を見据えた経営改革
みずほフィナンシャルグループは現在、新たな人事制度「かなで」を推進しながら、AI時代の経営について、議論を進めている最中だ。
「ストーリー重要」の時代は終わった レイ・イナモト氏が語る、これからのブランド構築の最適解
レイ・イナモト氏はAIが躍進するこれからの時代「“意味”を伝えるストーリーテリングだけでは、もはやブランドは構築できない」と警鐘を鳴らす。
年間「8.7万時間」の削減 ソフトバンクの営業組織は、なぜ「AIに優しく」するのか
ソフトバンクでは法人顧客への提案活動を支援するツールを開発・活用し、年間8.7万時間の業務時間削減に成功するなど、大きな成果を上げてきた。同社は生成AI活用によって営業活動をどのように変革してきたのか。
Geminiを業務で使いこなす! Google Cloudが指南する「プロンプト入力」4つのポイントは?
GoogleのAI「Gemini」を業務で使いこなすには──? Google Cloudの担当者がレクチャーした。
野村が捨てた「資産3億円未満」を狙え SMBC×SBIが狙う“新興富裕層”の正体
SMBC×SBIが、「Olive Infinite(オリーブ インフィニット)」というデジタル富裕層向けサービスを開始した。野村證券をはじめとする大手証券会社が切った「1億〜3億円層」に商機があるという。
一時は赤字転落も アシックスのV字回復を支えた「ブランド構築」の考え方
一時は赤字に転落しながらも、いまや営業利益が1000億円を超え、海外売上比率は80%以上まで成長し、見事なV字回復を遂げたアシックス。その裏には、ものづくり企業としての誇りを守りながらも、顧客目線でグローバルブランドとしての信頼を積み上げた変革の物語があった。
