「日産スタジアム」「味スタ」「ほっともっとフィールド」近年過熱する公共施設の“ネーミングライツ”がもたらす功罪(1/3 ページ)
ここ10年ほどで目にすることが増えた、公共施設のネーミングライツ。その功罪について考えていく。
著者プロフィール
山口伸
経済・テクノロジー・不動産分野のライター。企業分析や都市開発の記事を執筆する。取得した資格は簿記、ファイナンシャルプランナー。趣味は経済関係の本や決算書を読むこと。 X:@shin_yamaguchi_
「日産スタジアム」の愛称で知られる横浜国際総合競技場だが、名前が変わる見通しだ。
同競技場は2005年に日産がネーミングライツ(命名権)を取得し、2026年3月からの1年間は現在の半額以下となる5000万円で日産が命名権を保持する方針だ。しかし日産は経営難にあえいでおり、その後の見通しは不明とされている。
2027年3月以降の命名権に関して、横浜市は公募をかけるとしている。国内ではこの20年ほどでネーミングライツの仕組みが普及し、公共施設に企業の名前が付けられるようになってきた。これまでの事例を振り返りながら、今後の動きについて考えていこう。
1990年代から米国で普及したネーミングライツ
日産スタジアムは横浜市が所有する。総工費は603億円で、収容人数は約7万2000人、年間維持費は約7億円だ。1997年に完成し、2002年のワールドカップ日韓大会で使われたほか、普段では横浜F・マリノスの本拠地としてJリーグの試合に使われている。同チームは日産のサッカー部を前身とし、もちろん日産がスポンサーだ。
日産は2005年に命名権を取得し、2021年から2026年2月までの契約では、最初の3年間は年1億円、後の2年間は年1億5000万円を支払う契約となっている。2026年度は日産の要求に応じて市は命名権の費用を減額したが、その後の見通しは不透明だ。市は命名権による収入を維持費にあてている。
スポーツ施設のネーミングライツは1990年代から米国で普及し、国内では「味の素スタジアム」を皮切りに普及していった。東京都が保有し、2001年に開場した「東京スタジアム」の命名権を味の素が2003年に取得。現在でも契約更新が続いており、2024年3月から2029年2月末までの5年間、総額で10億5000万円を支払う契約となっている。
現在は、J1のFC東京と東京ヴェルディの本拠地として使われている。味の素は2015年にFC東京とスポンサー契約を締結している。サッカー場では企業が施設の命名権を取得するとともに、同施設を本拠地とするチームとスポンサー契約を結ぶことが一般的だ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

