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AIエージェント時代に、新たに生まれる職種とは? HubSpotが描く次世代組織の姿HubSpot「INBOUND」レポートVol.3

生成AIの次は、AIエージェントだ──そんなことをよく耳にする。米HubSpotでAI系製品のディレクターを務めるディラン・セルバーグ氏は、AIエージェント時代に、新たに生まれる職種があるのではないかと語る。

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 生成AIの次は、AIエージェントだ──そんなことをよく耳にする。

 日本国内では、ソフトバンクグループの孫正義会長兼社長が7月に「グループ全体で年内に10億のAIエージェントを作る」と宣言し、話題を集めた。

 AIエージェントという言葉はよく耳にするが、実際に使いこなしているという事例はまだ少ないように感じる。CRM(顧客管理システム)を中心としたさまざまな製品群を提供する米HubSpotでAI系製品のディレクターを務めるディラン・セルバーグ氏(Director, Product - AI)は、従来の生成AI導入とAIエージェントでは、課題感が根本的に異なると指摘する。

 AIエージェント時代、組織に求められる対応は? 取材した。

「なんでもできる」より「特定の役割を担う」AIエージェントに支持

 ディラン氏は生成AI活用について、「退屈で手間のかかる業務を引き受け、人間が本来時間を割くべき職務に集中できる環境を整えてくれる」と語る。

 加えて複数の職務をまたぐ領域で力を発揮すると続ける。「従来のソフトウェアソリューションは特定の職種を支援するよう設計されているものが多く、職種をまたいだ支援は難しかった。しかし生成AIは複数の領域が交差する業務を支援できる。例えば営業からカスタマーサクセスへの顧客の引き継ぎなどがある」

 非IT人材における生成AI活用が進みにくい要因については、(1)個人の意欲の問題、(2)AIが人間が期待する成果を出せていないこと──の2点を挙げる。

 1つ目の個人の意欲については、現在の業務フローを根本的に変えることに抵抗がなく、再学習する柔軟性があるかどうかは、個人の内面的な葛藤の問題だと説明した。

 2つ目について、現状のAIサービスの使いやすさに課題があると指摘する。使う方が手間だと感じたり、ユーザーが『どう使えばよいのか分からない』と思ったりした経験が、個人の生成AI活用の障壁となる。

 HubSpotではユーザーが通常業務で使用している既存のワークフロー内にAIを組み込むことを重視。人間が複雑なプロンプトを打ったり、適切なモデルを選択したりしなくても、普段のツール活用の延長で自然と生成AIを使っている状態を作ることを目指す。


米HubSpotでAI系製品のディレクターを務めるDylan Sellberg氏(Director, Product - AI)

 同社は9月3〜5日、米サンフランシスコで開催した年次イベント「INBOUND」で、15以上の専門エージェントのローンチ、アップデートを発表。AIエージェントの提供に舵を切っている。

参考記事:流入「80%減」 AI検索で大打撃を受けたHubSpotは、どうやって“未来の顧客”を取り戻した?

 今回の発表で特徴的なのは、“なんでもできる”マルチなエージェントではなく、明確な役割を持ったエージェントを複数提供している点にある。顧客情報の調査、顧客問い合わせ……など、1つの業務を得意とするエージェントをそろえた。

 ディラン氏は「昨年は多機能なエージェントを提供していたが、多くの顧客から『AI導入の初期段階にあるため、全ての業務を一度に自動化するのは早すぎると感じる』とフィードバックが届いた」と振り返る。

 「顧客の多くは、調査機能やシーケンス登録機能、あるいはエージェントが作成したメールそのものに強く引かれていました。『この機能だけ気に入っているから、この部分だけ、自動化を始めたい』と」

 「そこで今回われわれは、特定の役割のみを担うエージェントを個別で使えるようにしました。中小企業は、ビジネスに必要な全てを一度にこなすような巨大なエージェントには、まだ対応できていないかもしれません。代わりに、AIをより迅速に導入し、組織内でよりスムーズに学びながら、小さな規模で始めるのです」

AIエージェント時代に新しく求められる役割とは?

 同社が目指すのは、AIエージェントを活用し、AIとヒトのハイブリッドチームを作る世界だ。

 同社が提供するAIエージェントプラットフォーム「Agent.Ai」には「データ分析が得意なAIエージェント」「SNS投稿の作成、実行、分析が得意なAIエージェント」「イベントの企画、運営が得意なAIエージェント」がずらりと並ぶ。各企業が状況に合わせ、求めるスキルを持つエージェントを選択し、日々の業務にエージェントを組み込んでいくことを想定している。


「agent.ai」

 しかし、AIエージェントを自組織で当たり前に活用するには、超えるべきハードルも多い。ディラン氏も、従来の生成AI導入とAIエージェント活用では、課題感が根本的に異なると指摘する。「私はこれから先、各組織にエージェントマネジャーという役割が存在するようになると予想しています」

 この役割は、現在のRevOps(収益最大化)に非常に近い形になると説明。エージェントのパフォーマンス評価や目標調整などを担う他、新たにエージェントを追加する際の調整なども担うという。「人間に管理者が必要なように、エージェントにも管理者が必要なのです」

 エージェントマネジャーは、マーケティングや営業といった特定の部門を管理する役割、会社全体のビジネスを俯瞰して戦略を考える役割、両方が必要だとディラン氏。

 「大きな組織では、中央集権型のRevOps担当者(全社を管理)と分散型のマーケティング、営業、サービスの担当エージェントマネジャー、両方が存在すると考えられます」

 最後に、エージェントマネジャーに求められるスキルセットについて聞いた。

 「組織とビジネスの目標を理解している必要があると思います。つまり、戦略的な思考力が必要です。また、エージェントが支援する個々の従業員の役割を深く理解する必要があります。例えば営業組織に属している場合、営業の仕組みや業務遂行に必要な要素を理解しなければなりません」

 「最後に、AIに関する一定の技術的素養も求められます。モデルの進化に合わせて改善を重ね、エージェントに適切なコンテキストを提供できる能力です。必ずしも技術エンジニアやエンジニアリングの経験が必要とは思いませんが、多くのシナリオで有用なスキルセットであることは確かですね」

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