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日米で進む「小売りのAI活用」 クリスマス・年末など季節商戦で活用する際のポイントとは(4/4 ページ)

少しずつ進む、小売における生成AI活用。日米の事例を見ながら、季節商戦などで成果をあげるためのポイントを解説する。

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 2023年12月、一正蒲鉾(新潟市)はおせち商戦で、メタバースと生成AIを活用したキャンペーンを展開しました。物理的な制限を超えたバーチャル空間で、おせち練りもの製品を使ってキャラクターやモチーフを表現した世界観をユーザーに楽しんでもらう企画です。新たに生成AIの活用とゲーム要素を付加することで、よりエンタメ性を強化し、特にZ世代などの若年層に対するおせちへの興味喚起を図りました。

 2024年のバレンタイン商戦ではGateboxによるChatGPTと連携したAIキャラクターが企業の接客業務を行うサービス「AIバイト」が、催事場での接客業務を担当するため全国の百貨店に登場しました。AIバイトの機器が棚に置かれ、来場者に話しかけて会話する姿は視覚的にもインパクトがあり集客に貢献したようです。

 アマゾンでは2023年ほどから年末商戦にAIをフル活用しています。ブラックフライデーやサイバーマンデーのセールで売り上げを最大化するため、膨大なプライム会員のデータを利用して、閲覧・検索・購買履歴に基づくターゲティング広告を改良し、出品者の商品プロモーションを支援してきました。

 これらはいずれも「短期集中プロモーション」「ギフト・需要喚起」「若年層接点拡大」という目的でAIを使い、季節商戦の新しい成功パターンを示しています。

 今年のクリスマスや正月商戦は、物価上昇や賃金上昇のバランスを加味すると価格訴求型が最も効果を上げるのか、それとも価値訴求で高価格帯の商材が売れる時流なのか。そのデータやトレンドに基づいた最も消費者に響く広告やPOPのデザインとはどのような点に訴求軸を置くべきか。これを生成AIの力を投入して、人の経験と勘との掛け算をしていく動きが今後さらに広まっていくことでしょう。

 そして季節商戦の生成AI活用における成功モデルが確立されていくと、来年の恵方巻やバレンタイン、新入学、新生活、母の日、夏の虫対策などさまざまな企画で昨年より精度の高いアプローチが実現していくはずです。

 日本の小売業では今後さらにチャネル間競争が激化します。EC対店舗という大きなくくりのみならず、ECと店舗の融合、ドラッグストア対ホームセンター、自販機対コンビニ、小売各社のEC、各社が会員化を強化するアプリ間競争など、競争の組み合わせは多岐に渡ります。

 このチャネル間競争激化時代に勝ち残るためにも、生成AIをいかに自社独自の成功モデルとして作り上げるかは、各社が掲げる成長戦略の鍵を握っていることに相違ありません。人が作るものとAIが支援するものをどう組み合わせ、スピードと質を両立させるか――それが、今後の季節商戦を勝ち抜く小売・消費財企業の新たな競争軸となりそうです。

 最後までお読みいただきありがとうございました。

著者プロフィール

佐久間俊一(さくま しゅんいち)

レノン株式会社 代表取締役 CEO

城北宣広株式会社(広告業)社外取締役

著書に「小売業DX成功と失敗」(同文館出版)などがある。

グローバル総合コンサルファームであるKPMGコンサルティングにて小売企業を担当するセクターのディレクターとして大手小売企業の制度改革、マーケティングシステム構築などDX領域のコンサルティングを多数経験。世界三大戦略コンサルファームとも言われている、ベイン・アンド・カンパニーにおいて2020年より小売業・消費財メーカー担当メンバーとして大手小売企業の戦略構築支援及びコロナ後の市場総括を手掛ける。2021年より上場会社インサイト(広告業)のCMO(Chief Marketing Officer)執行役員に就任。

2022年3月小売業と消費財メーカーの戦略とテクノロジーを専門にコンサルティングするレノン株式会社を設立。

2019年より1年半に渡って日経流通新聞にコーナーを持ち連載を担当するなど小売業には約20年間携わってきたことで高い専門性を有する。

日経MJフォーラム、KPMGフォーラムなど講演実績は累計100回以上。


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