帝国データバンクは10月23日、福利厚生に関する企業の実態調査の結果を発表した。調査の結果、約5割の企業が今後福利厚生を充実させる予定であることが分かった。
法定福利を除く福利厚生について「内容を充実させる」予定の企業は17.4%、「金額を充実させる予定」は4.6%、「内容・金額の両方を充実させる予定」は25.6%だった。いずれかの形で福利厚生を充実させる企業は合計で47.6%に上った。
調査では「求職者が福利厚生を重視する傾向が見られ、企業としてはその充実が求められている」「従業員の定着率を上げるためにも、同業他社に引けを取らないレベルまで改善を図っていく」といった声が寄せられた。
一方で、「福利厚生を充実させる予定はない」企業は30.6%。「充実させたいが原資の確保が難しい」「賃上げが優先と考えている」といった意見も見られた。
企業規模別、業界別に「福利厚生を充実させる予定」の企業の割合を調べた。
「大企業」は57.9%で全体(47.6%)を10.3ポイント上回った。「中小企業」は45.8%、そのうち「小規模企業」は38.5%と、規模が小さいほど割合が低くなる傾向が見られた。
中小企業からは「最低賃金上昇などのコスト増に対する売り上げの増加が見込めず、導入する余裕がない」「中小零細企業ではできることが制限され、大企業のようには充実させられない」といった声が挙がった。
業界別では、人手不足が深刻な「建設」(58.7%)と「運輸・倉庫」(55.1%)が高い割合を示した。「社員のみならずその家族も入れた補助に力を入れたい」「社員のエンゲージメント向上、採用対策にとって福利厚生の充実は重要と考える」といったコメントがあった。
現在導入している福利厚生は「通勤手当」(85.5%)が最も多く、「慶弔休暇」(85.4%)、「慶弔見舞金」(76.1%)、「退職金」(76.0%)、「傷病休暇」(65.9%)など従来型の制度が上位を占めた。
一方、「短時間勤務」(37.5%)、「時差出勤」(28.9%)、「在宅勤務」(28.5%)、「フレックスタイム」(19.5%)など柔軟な働き方に関する制度や、「人間ドック」(36.6%)、「メンタルヘルス相談」(28.1%)など健康支援に関する制度の導入率は比較的低かった。
また、「メンタルヘルス相談」「社宅・寮」「永年勤続表彰」の導入では、中小企業が大企業より30ポイント以上低かった。
今後取り入れたい福利厚生は、「社員旅行の実施・補助」「フレックスタイム」がともに11.4%で最多だった。以降、「人間ドック」(11.3%)、「育児・介護に関する補助(法定以上)」(11.1%)、「ノー残業デー」(10.5%)、「奨学金返還支援(代理返還)制度」(10.4%)が続いた。
帝国データバンクは「『時代遅れ』と言われた社員旅行が、コミュニケーション不足の解消に加え、働き手の『働く環境』や『人間関係』を重視する傾向を背景に、形を変えながら再び注目されている」と分析した。
本調査は9月16〜30日、全国2万5546社を対象にインターネットで実施。1万554社から回答を得た。
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