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「労働時間の規制緩和」議論に募るモヤモヤ なぜ日本の働き方は“時間軸”から抜け出せないのか?働き方の見取り図(3/3 ページ)

現在にわかに進んでいる「働き方改革」の見直し議論には、ある重要なポイントが見過ごされているように思えてならない。どのようなポイントなのか、詳しく見ていきたい。

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変えるべきは業務の進め方

 時間単価を上げるには、より短い時間で高い成果を出せるよう文字通り“働き方”を変える必要があります。走り方に例えると、ジョギングからダッシュへとスピードを上げ、同じ時間内に進む距離を増やす取り組みだと言えます。

 ただし、社員に過度な緊張感を与えるなどして働き手により多くの負荷をかけることで、気合や頑張りといった労力をダッシュさせてしまっては疲弊してしまいます。変えるのは業務の進め方であり、仕組みの工夫改善によって、成果が出るスピードをダッシュさせていくということです。

 方法は大きく3つ。1つは工程短縮です。担当する職務を遂行するのに業務工程が10コある場合、工程の順序を見直したり無駄を省いたりして9コに減らすことができれば、効率は10%程度上がることになります。


写真はイメージ(ゲッティイメージズ)

 次に、同時並行です。例えばAIやRPAなどのテクノロジーを活用すれば、一部の業務をそれらに任せながら、自分は別の作業に取り掛かることができます。同じ時間内で複数の業務を同時に進められれば、生産性を2倍・3倍と高めることも不可能ではありません。

 3つ目は手法改善です。紙で行っていた手続きをオンラインに切り替えたり、会議中に資料を読み上げるのをやめて事前共有したりと、業務の取り組み方そのものを見直すことで、仕事の進行をスムーズにしたり、無駄を省いたりすることができます。

 時間当たりの成果を増やして生産性が上がれば、給与の時間単価も引き上げられます。それをどう実現させていくかに、工夫と知恵と労力を注ぎ込むことが求められます。生産性の向上なくして給与を引き上げられるのは余力がある会社だけですし、生産性向上が伴わなければ、やがてその余力にも限界がきます。

 時間軸ありきの発想のままだと、「より稼ぐためには、より長く働く必要がある」という思考から抜け出せません。かつてハッスルカルチャーがもてはやされ、土日出勤もいとわずに働くことが当たり前だった時代の悪しき名残(なごり)です。

 時間は有限であり、決して無尽蔵な資源ではありません。働き方改革で求められるのは、限られた時間の中で出せる成果をいかに高められるかです。成果軸ありきへと切り替えることなく、労働時間規制の緩和か強化かといった時間軸ありきの視点に立っている間は、いつまでたっても働き方は変わらず、規制の改革にとどまるのではないでしょうか。

著者プロフィール:川上敬太郎(かわかみ・けいたろう)

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ワークスタイル研究家。1973年三重県津市生まれ。愛知大学文学部卒業後、大手人材サービス企業の事業責任者、業界専門誌『月刊人材ビジネス』営業推進部部長 兼 編集委員の他、経営企画・人事・広報部門等の役員・管理職を歴任。所長として立ち上げた調査機関『しゅふJOB総研』では、仕事と家庭の両立を希望する主婦・主夫層を中心にのべ5万人以上の声を調査。レポートは300本を超える。雇用労働分野に20年以上携わり、厚生労働省委託事業検討会委員等も務める。NHK「あさイチ」「クローズアップ現代」他メディア出演多数。

現在は、『人材サービスの公益的発展を考える会』主宰、『ヒトラボ』編集長、しゅふJOB総研 研究顧問、すばる審査評価機構 非常勤監査役の他、執筆、講演、広報ブランディングアドバイザリー等に従事。日本労務学会員。男女の双子を含む4児の父で兼業主夫。


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