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AIは「敵」ではなく「相棒」になれる 人材育成の現場で期待される共存関係

AIは、日常的なキャリアコーチング業務の約90%を提供できる一方で、感情的な議論や政治的・価値観に関わるテーマでは依然として人間の専門的支援が必要である――。米調査機関The Conference Boardは、10月22日に公表した報告書の中でこのように指摘した。

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HR Dive

 AIは、日常的なキャリアコーチング業務の約90%を提供できる一方で、感情的な議論や政治的・価値観に関わるテーマでは依然として人間の専門的支援が必要である――。米調査機関The Conference Boardは、10月22日に公表した報告書の中でこのように指摘した。

 報告書によると、AIコーチングの普及によって「全ての労働者がコーチを持てる」環境を実現できる可能性があるという。その一方で、個人データの取り扱いを誤ると、セキュリティやプライバシーのリスクが大きいことも強調している。

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提供:ゲッティイメージズ

AIは人間の代替ではなく、支援する存在

 The Conference Boardの人的資本部門主席研究員アラン・シュワイヤー氏は「AIコーチングは、企業が全ての従業員に成長の機会を拡げるための重要な転換点をもたらす。適切に活用すれば、成長の民主化を進め、人間のコーチの影響力を拡大し、企業のリーダーシップ育成の在り方を根本から変革できる」と述べた。

 AIツールの導入が進む中、アイルランドの調査会社CalypsoAIの調査では、経営幹部の約半数と従業員の38%が「AIマネジャーの方を好む」と回答した。また、業種によって差はあるものの、約半数の従業員が「同僚よりAIのほうを信頼している」と答えている。

 The Conference Boardの調査では、従業員の96%が「AIは目標に合わせたカスタマイズされたコーチングを提供している」と回答。さらに、90%が「使いやすい」、89%が「具体的で有用な次のステップが提示された」、91%が「再びAIコーチングを利用したい」と答えた。従業員によると、AIコーチングは目標設定、難しい会話の練習、批判的思考の促進、実行可能なフィードバック提供など、さまざまな面で支援するという。

 一方で、報告書はAIコーチングの弱点として、台本的な言語運用、即興性の欠如、個人的なつながりの薄さ、文脈記憶の一貫性不足などを挙げている。

 また、学習サービスを手掛ける米LearnUponの調査によると、学習・人材開発(L&D)リーダーの40%が「AIが自分の職務を代替するのではないか」と懸念しており、特に小売業、教育、テクノロジー分野で不安が高いという。ただし同調査では、L&Dの役割がむしろ職場内で強まっており、職能転換の過渡期にあることも示唆された。

 The Conference Boardは、「AIは人間の代替ではなく、人間のコーチを支援する存在になり得る」と指摘する。AIは、管理業務の自動化、行動・認知パターンの分析、セッション間のフォロー、組織レベルでの課題検出などに貢献できるという。

 特に人事担当者にとっては、AIと人間によるハイブリッド型コーチングモデルの採用が有効だ。例えば、マネジャーやスキル向上支援のコーチがAIの分析結果を活用すれば、コーチング対話の質を高めることができる。

 さらに、最高人事責任者(CHRO)は、AIによるデータ活用と機密保持に関して「心理的安全性」と「透明性」を確保し、感情的ストレスや重大なキャリア決定を伴うケースについては、人間のコーチにエスカレーションする基準を明確に定めるべきだとしている。

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