「双子の母親」だから分かった不安とニーズ 見過ごされていた「多胎育児」という超ニッチ市場にどう挑むのか(1/3 ページ)
少子化が進む中、さらにニッチな多胎児の親を対象にしたアプリが、この3月に誕生した。アプリを手掛ける企業を取材した。
著者プロフィール
山口伸
経済・テクノロジー・不動産分野のライター。企業分析や都市開発の記事を執筆する。取得した資格は簿記、ファイナンシャルプランナー。趣味は経済関係の本や決算書を読むこと。 X:@shin_yamaguchi_
双子・三つ子など、同じ母から同時期に生まれた子どもを「多胎児」と呼ぶ。出産に占める多胎の割合はわずかだ。政府によると2023年における国内の出生数は73万3993で、そのうち多胎は8708と1%ほどだった。
この3月には、そんな多胎児を育てる親を対象としたアプリ「moms」がリリースされた。出生数が減る中でも子育て・出産をサポートするアプリは数多くリリースされているが、特に多胎児の親を対象とした専用アプリはこれまで存在しなかったという。アプリ上では多胎の親同士が悩みを相談できる。アプリを運営するponoの社長であり、自身も双子の男の子を育てる牛島智絵氏にmomsの開発経緯と機能について取材した。
自身の経験が、開発のきっかけ
ponoは2025年2月に福岡市で設立した。市が運営するスタートアップ支援施設「Fukuoka Growth Next」に拠点を構え、2025年度の「福岡市ソーシャルスタートアップ成長支援事業」に採択されている。
momsにはSNSのようなトーク機能やショップ機能などがある。pono代表の牛島氏は2008年に集客コンサルとして起業し、2013年からはSNS関連に領域を広げた。福岡市に移住したのは2018年。moms開発に至った背景について次のように話す。
「2021年に双子の男の子を出産しました。妊娠中からSNSで情報発信を続け、コロナ禍が落ち着いた2022年から個人でママ同士の交流会を始めました。多胎児を育てていると忙しくて、なかなか交流会まで足を運ぶことができない人もいて、オフラインの交流では限界があると感じ、momsの構想に至りました」
子育て・出産に関するアプリは数多く存在するが、多胎をテーマにした専用アプリはこれまでなかったと牛島氏は話す。超ニッチな市場であるため、開発に積極的な企業が現れなかったのだろう。
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