資生堂が過去最悪の赤字に 低価格撤退やM&Aの迷走……再建の望みは?:長浜淳之介のトレンドアンテナ(2/5 ページ)
資生堂が過去最悪の赤字となる見通しだ。この転落を招いた原因はさまざまだが、再建のための打開策はあるのか?
資生堂の事業、何が好調で、どこが不調なのか?
資生堂の2025年12月期第3四半期(1〜9月)連結決算によれば、売上高ベースの事業構成比は、日本事業が31.6%、中国・トラベルリテール事業が34.6%、アジアパシフィック事業が7.6%、米州事業が11.3%、欧州事業が13.9%、その他1.1%となっている。
事業区分が地域別となっているのが大きな特徴で、特に中国・トラベルリテール事業が日本事業を上回り、最大のシェアを占めている。トラベルリテールとは空港や市中免税店での化粧品・フレグランス販売を指し、インバウンド観光客の“爆買い”需要もここに含まれる。
今年と昨年の第3四半期の伸び率を比較すると、好調なのは日本事業と欧州事業だ。日本事業は今年こそ0.1%増と横ばいだが、昨年10.2%増と高い伸びを示していた。プレステージブランドの「クレ・ド・ポー ボーテ」やアンチエイジングライン「エリクシール」など、コアブランドの新商品の売れ行きが好調だったのが理由だ。
欧州事業も5.0%増と堅調で、昨年の10.9%増に続いて最も成長が続く地域となった。「ZADIG&VOLTAIRE(ザディグ エ ヴォルテール)」や「narciso rodriguez(ナルシソ ロドリゲス)」といったフレグランスカテゴリが成長を後押しした。
一方、米州事業とアジアパシフィック事業は不調に転じた。米州事業はドランク エレファントの不振が大きく影響した。また、アジアパシフィック事業は、タイや韓国は堅調だったものの、台湾で高額化粧品の需要が減退し、今年は1.4%減となった。
中国事業とトラベルリテール事業は、昨年に続き厳しい状況だ。中国では景気低迷が続き、百貨店を中心としたオフライン販売が伸び悩んでいる。トラベルリテール事業は、日本ではインバウンド拡大で堅調だったものの、中国・海南島や韓国での中国人旅行者の消費が大幅に減少し、業績を押し下げた。
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