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資生堂が過去最悪の赤字に 低価格撤退やM&Aの迷走……再建の望みは?長浜淳之介のトレンドアンテナ(3/5 ページ)

資生堂が過去最悪の赤字となる見通しだ。この転落を招いた原因はさまざまだが、再建のための打開策はあるのか?

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資生堂不振の要因は……?

 資生堂の不振については、2014年に社長に就任し、2023年に会長CEOとなってから2025年3月に取締役を退任するまで、約10年間グループを率いてきたプロ経営者・魚谷雅彦氏の失政を指摘する声が多い。

 魚谷氏は、日本コカ・コーラで社長・会長を務め、「ジョージア」「爽健美茶」「綾鷹」などを再成長させたマーケティングの名手として知られる人物だ。この実績を携えて、2014年に資生堂へ乗り込んできた。

 魚谷氏の就任当時の資生堂は、2013年3月期に最終損失147億円の赤字に転落し、国内事業の不振が深刻だった。国内と海外の売り上げが拮抗(きっこう)していたが、特に低価格帯の「シーブリーズ」などが不調で、「クレ・ド・ポー ボーテ」など高価格帯は堅調という構造だった。海外では尖閣諸島国有化をきっかけとする反日運動の影響で、中国事業が打撃を受けるなど、リスクも顕在化していた。

 さらに、2014年はアベノミクスで景気は上向きつつも、消費税が5%から8%に引き上げられるなど市場環境の変動が大きかった。

 魚谷氏が資生堂のかじ取りを託されたのは、まさにこうした「国内需要の弱さと中国リスクが同時に存在する」難しいタイミングだった。


ドラッグストアの免税店。コロナ前は中国からのインバウンド需要にわいた(筆者撮影)

 しかしその頃から、訪日観光客が急増。中国からの観光客はドラッグストアで日本の化粧品を“爆買い”し、資生堂を含む各社は大きな恩恵を受けた。資生堂は日本で商品を買った中国人が自国でもリピートできるよう、中国市場の開拓にさらに力を入れた。中国ではインフルエンサーの影響力が強く、資生堂ブランドの品質の高さはSNSを通じて広まり、販売網は一気に広がった。

 こうした追い風もあり、2019年には売上が過去最高の1兆1315億円に到達。2014〜2019年の資生堂は、インバウンド需要と中国市場の伸びに乗り、異例の成長を遂げた。

 しかし、コロナ禍で状況は一変した。百貨店中心の販売形態が打撃を受け、マスクの常時着用により口紅やファンデーションなどの需要が激減。強みであったカウンセリング販売もできなくなった。

 一方でECは急速に伸び、売上比率は2019年の13%から2021年には34%にまで跳ね上がったが、大幅な需要減を埋めるには至らず、2020年には再び最終損失117億円の赤字に転落した。

 2021年には海外事業が回復し424億円の黒字に転じたものの、パンデミックによる大打撃は、その後の業績にも大きな影響を与えている。

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