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バーガーキングをゴールドマンが買収 日本市場で苦戦してきた歴史 今度こそ“大化け”するか長浜淳之介のトレンドアンテナ(4/5 ページ)

バーガーキングの日本事業を米投資会社のゴールドマン・サックスが買収した。これまでに何度も撤退をしては、運営会社も変わってきたバーガーキング日本事業だが、今後の戦略と展開は……?

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ある出店戦略で知名度も向上

 そして2017年、アフィニティがバーガーキング・アジア・パシフィックとマスターフランチャイズ契約を締結。日本法人を買収し、ビーケージャパンホールディングスを設立した。ここから、日本事業の本格的な立て直しが始まる。

 まず出店戦略の見直しに着手し、初期投資を抑えられる商業施設やショッピングセンター内への出店を重視した。その一環として、ロッテリア運営時代に残っていた収益性の低い店舗を整理。2019年までに韓国ロッテリア系列などの約20店舗が一斉に閉店している。

 2019年以降は一転して積極出店へとかじを切り、2019年5月時点で77店だった店舗数は、わずか6年ほどで4倍近くに増え、2025年には300店舗を突破した。

 店舗の分布を見ると、特に首都圏では鉄道路線に沿って出店を進めているのが分かるが、これは偶然ではない。特定エリアに集中的に店を出すことで認知度を高め、物流や人材面の効率も上げる「ドミナント戦略」を採用したためだ。例えばJR京浜東北線では、大宮〜赤羽間の駅前には複数のバーガーキングがある。この地域に住む人にとっては、自然とよく見かける店となり、ブランド認知が高まっている。


バーガーキングのメニュー

 近年は、マクドナルドの値上げが続いたことで価格帯も近づいてきた。「ビッグマック」は480円〜に対し、バーガーキングの主力「ワッパー」は590円。100円ほど高いものの、直径12センチの大きなバンズ、肉厚のパティ、店内カットの新鮮な野菜など、体験価値を考慮すればワッパーを選ぶ消費者も多いだろう。

ファンを巻き込んだ出店拡大は吉と出るか?

 2023年に代表取締役社長に就任した野村一裕氏は、キリンビールで営業やマーケティングを担当した後、2019年にマーケティングディレクターとしてビーケージャパンに入社した人物だ。

 ユニークな取り組みとして挙げられるのが、ファンから出店候補地を募る「バーガーキングを増やそう」キャンペーンである。これまでに2回実施し、紹介された物件が成約に至った場合は賞金を支払うという、気前の良い仕組みになっている。昨年は7万8000件を超える応募が集まり、その中から12店舗を出店。12月に一挙25店を全国に出店するが、そのうち10店が当該キャンペーン対象店だ。このように、ファンとともに新店舗を増やしていく戦略により、バーガーキングの出店ペースは今後さらに加速していきそうだ。

 勢いに乗るバーガーキングだが、ゴールドマン・サックスの投資判断が吉と出るか凶と出るか。現状の勢いなら期待が持てるのではないだろうか。

著者プロフィール

長浜淳之介(ながはま・じゅんのすけ)

兵庫県出身。同志社大学法学部卒業。業界紙記者、ビジネス雑誌編集者を経て、角川春樹事務所編集者より1997年にフリーとなる。ビジネス、IT、飲食、流通、歴史、街歩き、サブカルなど多彩な方面で、執筆、編集を行っている。著書に『なぜ駅弁がスーパーで売れるのか?』(交通新聞社新書)など。


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