「決算に誤り」の危機も救った ツルハHD“たった一人”の非デジタル人材が進めたDXの軌跡(2/3 ページ)
全国に約2650店舗を展開するツルハホールディングスでは、長い間店舗のデータを社内システム、各部門が管理するExcel、紙などに分散管理していた。 “悲惨”だった同社の店舗データ基盤を整理し、たった一人で“神様データ”へと変貌させる「ひとりDX」を成し遂げた、財務経理本部 IR・予算管理部部長 若林慧氏に聞いた。
どうやってデータを整備したのか
ツルハHDは、ドラッグストアの他に調剤薬局も運営する。ドラッグストア内に調剤薬局を併設する店舗もある。
また、ドラッグストアだけだった店に調剤薬局を併設するなど、オープン後に業態を変える店舗もあるため、「店舗の業態の変更や追加に柔軟かつシームレスに対応できる仕組みが求められた」と若林氏は振り返る。
そこで開発したのが、親子別のデータベースからなる店舗マスタアプリだ。
店舗名や電話番号、住所といった店舗ごとの基本情報は“親”データベースである「基本DB」に、業態区分など業態に関する情報は“子”データベースの「運営情報DB」に格納した。運営情報DBにある基本情報は自動連携する仕組みだ。
途中で業態が変わる場合は「文書改定申請」アプリで申請するようルール化した。アプリで申請した内容が承認を経ることで、変更箇所が基本DBと運営情報DBに反映される。
「作成したデータベースは、全社で唯一信頼できる店舗マスタデータ──“神様データ”となった」と若林氏。
「当初は、自分の業務効率化のために始めた店舗マスタデータの整備だったが、正確な情報が格納されていることもあり、『〇〇エリアの、店舗併設の調剤薬局はいつ開店する?』といった問い合わせが来るなど、次第に社内へと広がって重宝されるようになっていった」(若林氏)
当時の上長であった経営戦略本部 経営企画部部長 河原高志氏は動画インタビューの中で、「店舗データがExcelで管理されていることに驚いたが、それが10人10様のルールで作られていた。IR部門ですら、他部署のデータを見て答え合わせをしているような状態だった。いつかは店舗情報をまとめて、全体の最適解として構築しなければならないと考えていたので、彼(若林氏)の取り組みには期待していた」と語った。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
データを紙・Excelで“バラバラ”管理 松屋が店舗運用のデジタル化を「現場主導」で成し遂げられた理由
松屋フーズホールディングスはこれまで、店舗運営に必要なデータを紙やExcelを中心に管理していた。同社は紙・Excel中心だった店舗運用をデジタル化することに成功し、現在は「予算管理」などさまざまな業務を効率化するため、アプリの内製化に取り組む。
流入「80%減」 AI検索で大打撃を受けたHubSpotは、どうやって“未来の顧客”を取り戻した?
米HubSpotはAI検索の影響を大きく受け、ブログへのトラフィックが80%減少した。同社はどうやって“未来の顧客”を取り戻したのか。ヤミニ・ランガンCEOが語る。
米Google幹部を直撃 年間「5兆回超」の検索は、AIでどう変わるか?
Google検索は、年間5兆回以上も使われている。AIにより「検索」が日々大きく変化している中、プラットフォーマーであるGoogleは今の状況をどのように見ているのか、話を聞いた。
GPT-5が大学院生なら、楽天のAIは高校生レベル? それでも挑む“日本語特化AI”の勝算
楽天では約3万人の社員のほとんどが、社内向けAI「Rakuten AI for Rakutenians」を日々活用。非エンジニアも含め社員自らがつくったAIツールは、日報・月報の作成や営業の育成プログラム、翻訳や開発のテスト自動化プログラムなど、すでにその数は2万を超えている。
野村が捨てた「資産3億円未満」を狙え SMBC×SBIが狙う“新興富裕層”の正体
SMBC×SBIが、「Olive Infinite(オリーブ インフィニット)」というデジタル富裕層向けサービスを開始した。野村證券をはじめとする大手証券会社が切った「1億〜3億円層」に商機があるという。


