毎月「5万時間」を創出 ソニーが語る“一番影響が大きかった”AI施策とは?:AI時代の「企業変革」最前線(4/5 ページ)
ソニーグループは、生成AIの活用によって毎月「5万時間」の余白を生み出した。旗振り役の大場正博氏(ソニーグループ AIアクセラレーション部門 責任者)に、これまでで一番インパクトが大きかった施策や、日々どのように情報をアップデートしているのか、“知識のリフレッシュ法”について話を聞いた。
日本人の「受け身の姿勢」はもったいない──コミュニティに飛び込む勇気が必要
中出: 日本企業全体におけるAI活用をさらに加速するために、次の一手はどうお考えですか?
大場: 個人の意見にはなりますが、国外で先行した技術ということもあり、黎明期においては保守的なスタンスの企業が多かったと感じています。2025年に入ったあたりからは具体的な活用事例や新しいサービスも出てきていますし、今後の日本企業のAI活用に対してはポジティブに受け止めています。
AIをどう上手くビジネスや社会に適応させていくかといった応用や発展は、日本人や日本企業が得意とする領域だと考えています。特に、日本語や日本の文化、法規制や商習慣に準拠したエンタープライズ向けLLMやAIエージェントは、当然ながら発展すると思いますし、日本が持つきめこまやかなサービスと経済効率への追求は、AIと相性の良い領域で、大変期待しています。
中出: ソニーグループのように、ベンダー(製品供給元)やプラットフォームの技術者と定期的に意見交換する機会を持つ日本企業は多くはないと思っています。そういう方々に向けて、どのように情報を集め、情報をアップデートしていけるか、明日からできることはありますか?
大場: 最新の技術情報と今後の動向を掴むことは大変重要視しています。技術進化と変化が速く、LLMを含めて各領域のリーダー企業がいつでも変化し得る状況です。多面的かつ新鮮な情報を得られるように、多くのAIモデルプロバイダーやAIプラットフォーマーと直接、密に連携を取ることを心がけています。
どうしても米国や欧州の企業が多くなりますが、郷に入っては郷に従う。私も決して英語が得意ではありませんが、英語力というよりも、AIコミュニティに飛び込む積極性と技術変化への追従に対する危機感が重要に思います。
課題解決のための議論をする場にも積極的に参加していますが、「多くの日本企業は受け身となり、セミナーのようになって深い議論に至らない」と半分笑い話として伺うことも多く、大変勿体ないと感じます。
テクノロジー企業の期待値は、具体的なユースケースの理解と技術改善へのフィードバックです。私たちの成功体験としても、ソニーグループの課題を共有し、共感を得て、後日機能として実装されたケースも少なくありません。
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