“DX後発”だったのに、なぜ? 雪印メグミルクが“驚異のスピード”でAI活用浸透できたワケ:AI時代の「企業変革」最前線(3/4 ページ)
雪印メグミルクが2024年4月から運用を開始した社内AI「YuMe*ChatAI」の活用が進む。同社は、DXにおいて後発だった。にもかかわらず、なぜ先行企業が苦戦する「現場定着」の壁を打ち破り、驚異的なスピードでAI活用を全社に浸透させることができたのか。
後発だからこその強み
中出: 「AI導入により自分の仕事がなくなってしまうのでは」という不安感を抱く話も聞きます。また、PoCを多々しても本実装に進まない悩みを持つ企業は少なくない中、成功の要因をどのように分析されていますか。
本田: 社員の声を聞く限り、「AIに仕事を奪われるのでは」といった不安はほとんどありませんでした。むしろ、「業務を支えてくれる便利なツール」として前向きに捉えている人が多かったですね。
導入初期には、使い方のマニュアルに加えて、すぐに使える約100個のプロンプト集(生成AIへの指示文のテンプレート)を社内で独自に整備しました。 最初から使える事例集を準備してスタートを切れたのは、浸透を加速させた要因の一つだと思います。
後藤: Teamsでコミュニティを作り、 YuMe*ChatAIに関する情報を発信したり、質問をしやすい環境を整えたりました。コミュニティの中で出てきた質問に対しては、他部門の社員も積極的に回答し、協力して疑問を解決するサイクルが出来上がったことも、大きな要因だったと考えます。
本田: 生成AIの導入決定から約2カ月で準備が完了し、AI活用がスタートしたのですが、スピード感も重要だと思いました。
加藤: 今回の基盤になったAzure OpenAI Serviceに関しては、基盤が既に世の中にそろっている状態でした。われわれは後発だったので、先行企業や仕組みの“いいとこ取り”をした面はあります。
小幡: 先行企業に直接ヒアリングし、成功事例と失敗事例の両方を学んだ上で「当社はどうするか」を検討できたことは、後発ならではの強みでした。
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