ChatGPTを抑え「利用者満足度」1位 AIワークスペース「Notion」が日本人にウケる理由
大量のナレッジが分散し、さらに、それを管理するためのツールまで細分化されている──コラボレーションソフトウェア「Notion」を提供する米Notion Labs CMOのレナ・ウォーターズ氏は、現在企業が抱える課題をこう指摘する。Notionは、ドキュメントの作成・共有、プロジェクトの管理、ナレッジの整理などを全て一カ所で行えるワークスペースを提供し、世界で1億人以上のユーザーを抱える。実は、アクティブユーザー数が世界で最も地域の一つが日本市場である。
大量のナレッジが分散。さらに、それを管理するためのツールまで細分化されている──コラボレーションソフトウェア「Notion」を提供する米Notion Labs CMOのレナ・ウォーターズ氏は、現在企業が抱える課題をこう指摘する。ナレッジワーカーは平均87種類のツールを使っていると言われており、「どこに何の情報があるか分からない」──“情報地獄”に陥る企業も少なくない。
Notionは、ドキュメントの作成・共有、プロジェクトの管理、ナレッジの整理などを全て一カ所で行えるワークスペースを提供し、世界で1億人以上のユーザーを抱える。実は、日本はAIサービス「Notion AI」のアクティブユーザー数が多い地域の一つである。国内では、トヨタ自動車やメルカリといった大手企業の他、スタートアップでの導入も多い。
【お詫びと訂正:2025年12月17日午前6時00分の初出で、Notionのアクティブユーザーに関する記述に誤りがございました。12月17日午後7時、該当箇所を修正いたしました。お詫びして訂正いたします。】
ICT総研が実施した調査では、Notion AIがChatGPTを上回り、利用者満足度1位を獲得した。
なぜ、Notionは日本でウケているのか。高い満足度を誇る理由は? レナ・ウォーターズCMOに取材した。
ユーザー数1億人超 「日本は世界でトップの市場」、なぜ?
──Notionの利用者数を教えてください。
「Notion」のユーザー数は世界で1億人を超えています。ここ数年でエンタープライズ向けに製品を拡大したこともあり、現在は二桁成長となりました(※)。
※一般ユーザーの無償・有償利用の比率は公表していない
日本はNotion AIのアクティブユーザー数が多い地域の一つ。特に、会議時にAIが記録やノート作成をする「AIミーティングノート」の採用率は、世界で日本が1位です。
日本では、会社員、学生問わず「ノートを取り、情報を整理して生産性を高める文化」が根強く、Notionはその文化に非常によく合っているのでしょう。
──数あるAIサービスの中で、Notionの差別化ポイントはどういった機能にあるのですか?
問題は、分散したナレッジを管理するためのツールが多すぎること。一般的なナレッジワーカーは平均87種類のツールを使っていると言われています。
AIエージェント活用では、ワークフロー構築も重要になります。もしナレッジを一カ所に集結できていたとしても、AIネイティブなワークフローがなければ、AIエージェントによる自動化を実現できません。
Notionの強みは、複数のアプリに散らばったナレッジを一カ所で、必要な作業とつなげられること。これを、各個人IDのアクセス権限に応じて実現できます。これにより、現在導入しているソフトウェアで重複している機能を見直すことも可能になります。
スタートアップでは、さまざまなSaaSと契約することをせず、オペレーションシステムとしてNotionを活用する傾向があります。
一方大企業は、すでに多くのツールを導入済みで、レガシーシステムに縛られてワークフローが硬直してしまっているケースが多い。DXやAI活用により、業務変革を起こすことを目的とするケースがよく見られます。
生成AIサービスで満足度「1位」 背景にコミュニティの存在
──日本でのNotionの広がりを支えてきたのは、コミュニティの存在も大きいのではないでしょうか?
日本ではコミュニティがNotionのブランドを築いてきました。デザインや使いやすさ、構築のしやすさは、コミュニティの力によるものです。
コミュニティからのフィードバックをもとに、5年間にわたり製品改善を続けています。機能改善の内容や、開発、情報発信の方向性を、アンバサダーに事前にリリースし、彼らからのフィードバックを基に、開発やリリースの内容を調整しています。
──ICT総研の調査によると、AIサービス「Notion AI」が法人向けAI満足度でChatGPTを上回ったという結果もありました。顧客の声を、実際に開発に生かした事例があれば教えてください。
「/」(半角スラッシュ)を入力すると、さまざまな機能を呼び出せるショートカットキーを用意していました。日本語キーボードではスラッシュコマンドが使いづらいという声を受け、日本語環境では特別に「;」(全角セミコロン)でもメニューの呼び出しができるように変更しています。
他にも、グローバルの機能を日本向けにローカライゼーションした際、コミュニティの皆さんから「これはNotionらしい表現ではない」といったフィードバックを受け、言い回しを調整することもありました。
──コミュニティには学生が多いことも特徴です。
学生の皆さんも、日々の授業などでノートを取り、情報を整理する必要があります。
日本では学生コミュニティが非常に活発で、ミートアップやテンプレート共有、AIユースケースの共有などが行われています。学生のみなさんが社会人になって、入社した企業でもNotionを使い続けてもらう──そんな流れができています。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
毎月「5万時間」を創出 ソニーが語る“一番影響が大きかった”AI施策とは?
ソニーグループは、生成AIの活用によって毎月「5万時間」の余白を生み出した。旗振り役の大場正博氏(ソニーグループ AIアクセラレーション部門 責任者)に、これまでで一番インパクトが大きかった施策や、日々どのように情報をアップデートしているのか、“知識のリフレッシュ法”について話を聞いた。
AI導入のカギは「行動変容」 ソニーグループが実践した、“現場が使いたくなる仕組み”とは?
ソニーグループは2023年から全社員の生成AI活用を推進し、わずか2年で5.7万人が日常業務で使う体制を整えた。同社では、日々15万件の推論が実行されている。
流入「80%減」 AI検索で大打撃を受けたHubSpotは、どうやって“未来の顧客”を取り戻した?
米HubSpotはAI検索の影響を大きく受け、ブログへのトラフィックが80%減少した。同社はどうやって“未来の顧客”を取り戻したのか。ヤミニ・ランガンCEOが語る。
年間「8.7万時間」の削減 ソフトバンクの営業組織は、なぜ「AIに優しく」するのか
ソフトバンクでは法人顧客への提案活動を支援するツールを開発・活用し、年間8.7万時間の業務時間削減に成功するなど、大きな成果を上げてきた。同社は生成AI活用によって営業活動をどのように変革してきたのか。
野村が捨てた「資産3億円未満」を狙え SMBC×SBIが狙う“新興富裕層”の正体
SMBC×SBIが、「Olive Infinite(オリーブ インフィニット)」というデジタル富裕層向けサービスを開始した。野村證券をはじめとする大手証券会社が切った「1億〜3億円層」に商機があるという。
月次報告180時間が「ゼロ」に パナソニック くらしアプライアンス社が挑んだVoC分析の改革
パナソニック くらしアプライアンスのCX事業開発室 CS-DX推進部は、年間約250万件のVoCを効率的に分析・活用する仕組みを構築。月次報告作業にかかっていた180時間をゼロにするという劇的な効率化を実現した。


