箱根駅伝でナイキを抜いたアシックス 王者アディダスに仕掛ける“軽量シューズ戦争”(2/4 ページ)
数年前、箱根駅伝でアシックスのシューズを着用している走者は0人だったことがある。そこから反転攻勢を仕掛け、今やナイキを抜き、王者アディダスの背中を見据えている。アシックスの戦略とは。
アディダスの8万円超の軽量シューズに対抗 3万円で勝負に
人気モデルが進化しただけでなく、アシックスは別の視点で新たなモデルを開発していた。それが「軽量モデルのニーズを受けて開発した」という「METASPEED RAY」だ。
「RAY」は日本語の「零(ゼロ)」からインスピレーションを得ており、実際かなり軽量だ。重量は129グラム(27.0センチ)。大手スポーツ用品が販売する厚底ランニングシューズでは最軽量となる。価格は3万3000円だ。
アシックスの廣田康人会長兼最高経営責任者(CEO)は「われわれの新しいイノベーションにより、現時点で一番良いものをランナーが買いやすい価格で出せた」と胸を張る。対抗意識を燃やしたのは前回の箱根駅伝でシェア1位になったアディダスの最速モデルだろう。
ウォーミングアップなどを含めてフルマラソン1回分で最大のパフォーマンスを発揮できるように設計された「ADIZERO ADIOS PRO EVO 1」だ。最大の特徴は138グラム(27.0センチ)という超軽量にある。ただ、価格が8万2500円というのが消費者にとっては悩ましかった。
RAYは価格の壁も超えた。その誕生の裏には「1グラムを削り出す戦い」(アシックス スポーツ工学研究所担当者)があった。
軽量化に成功した最大の要因は前述した新フォームの超軽量素材である「FF LEAP」をミッドソール全体と中敷きに採用したことだろう。またカーボンプレートもフルレングスではなく、前足部中心でよりミニマムな形状となっている。
「レイヤーが増えると接着に使う糊(のり)も増える。RAYはミッドソールを1層のみにして、カーボンプレートも最小限にしています。そして踵部分をどこまで削れるのか。削って、走って、削って、走って、を繰り返して、ギリギリまで削りました。それからグリップも半分程度の薄さにして、シューレースの先端につけるプラスチックパーツを取り除き、ひも先を圧着しました。本当に1グラムの積み重ねで129グラムという超軽量を達成したんです」(同担当者)
安定性を求める選手には「SKY TOKYO」と「EDGE TOKYO」。軽量性を求める選手には「RAY」という選択肢ができた。「できるだけ多くのアスリートにプロダクトを提供したい」というアシックスの熱い思いが実現したことになる。
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