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「返礼品」だけで語っていないか ふるさと納税が自治体に突き付ける覚悟(4/4 ページ)

「返礼品」が注目を集めることも多いふるさと納税。しかし、この制度は納税者が「どの自治体を、どの政策のもとで支えるのか」を意思表示する仕組みでもある。ふるさと納税の本質と「選ばれる自治体」の今後の可能性を考える。

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地域との新たな関わり方「ふるさと小包交換」の可能性

 冒頭で、筆者は、ふるさと納税でご当地のレトルトカレーを選ぶことも多いと書きました。こうした地域の食文化を伝える手段は、ふるさと納税だけではありません。

 ここでは「ふるさと小包交換」という、興味深い取り組みをご紹介したいと思います。

 「ふるさと小包交換」は、あるSNSのコミュニティで生まれたアイデアで、金額を決めてレターパックで地元の銘菓や名物、食材などを送り合うというものです。

 具体的には次のような流れで進みます。

  1. SNSで交換相手を募集する。最初はSNS上のやり取りで話を進め、マッチングした後はDMで詳細(好きなもの、嫌いなもの、アレルギーの有無、予算、発送時期、発送方法など)を調整する。
  2. 相手に送るものを選ぶ。DMで調整した条件に基づいて、地元のスーパーや道の駅などで送るものを選び、購入する。その際、地元の人しか知らないようなもの、地域の文化と結びついているもの、個人的な思い出の品などを選ぶと相手に喜ばれる。
  3. メッセージを付けて発送する。選んだ理由や背景を手紙やメモで伝える。観光パンフレットを同封することもある。お互い発送方法の条件を決めるので、その範囲で工夫を凝らして発送する。発送後は追跡番号を伝えるとお互い安心。
  4. 受け取ったら、感想を伝える・SNSに投稿する。まず届いたら「届きました」と連絡。食べたら感想を伝える。通販では得られない「仲間意識」や「試みの共感」が生まれる。

 このような取り組みを実際にやっている方のInstagramを見ると、さまざまな地域からのふるさと小包が写真で紹介されています。

閉じたコミュニティが生む“やさしい交換”

 この取り組みの面白いところの一つは、「レターパックという限られた条件の中で品物を発送する」ところにあります。レターパックプラスであれば、折り曲げて立体にすることができるので、ある程度の大きさの品物を送ることができるのです。お互いの了解があれば、レターパックプラスではなく宅急便やクール便での交換もあるようです。

 また「信頼」をベースにして成立している取り組みであることも興味深いです。「買い物」ではなく「交換」なので、互いに相手のことを考えて品物を選びますし、互いの予算のバランスにも配慮します。マッチングまでの間にSNS上でやり取りしながら「信頼」できるかを見極めることも必要です。特に発送の際にはお互いの個人情報を明かす必要があるため、危険を伴う可能性はゼロではありません。

 ソフトウェア開発論で知られるエリック・レイモンドは、組織やコミュニティのあり方を「伽藍(がらん)とバザール」に例えました。「伽藍」は少人数が指揮系統で厳密に作る閉鎖的な開発、「バザール」は多数が自由に意見を出し合って作るオープンな開発を指します。

 「ふるさと小包交換」の仕組みは、この例えで言えば、まさに「伽藍」のモデルだと言えるでしょう。交換を成立させるためには、誠実な行動による信頼を積み重ねることが必要になります。信頼を失う行動を取れば、このSNSという「伽藍」から追放されてしまうのですから。

 筆者は、「ふるさと小包交換」を実施している方に会って話を伺ったことがあります。その際、「ふるさと小包交換」のSNSはとても「やさしい空間」だと語っていたのが印象的でした。そして、この空間を維持させるための振る舞いこそが、「ふるさと小包交換」を成功させている秘訣なのだと思いました。

 今後はふるさと小包交換を仲介するような事業者が現れるかもしれません。例えば、お互いの個人情報を明かさなくてもマッチングさせ、品物の交換ができるようなエスクロー(Escrow:双方の間に信頼できる中立的な第三者が入り、品物などを一時的に預かり、条件が満たされた後に適切に引き渡すことで交換の安全性を確保する仕組み)サービスなどが考えられます。

 こうしたサービスがあれば最初の信頼を築く上で安心感を得られる可能性があります。一方で、第三者が介在することで、この取り組み本来の魅力や温かみが損なわれてしまう懸念もあります

 程よい規模感、程よい閉鎖感を維持させつつ、互いの地域の魅力を、食文化を通じて伝え合うような仕組みができると素晴らしいですね。

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