販売実績ゼロなのに、三越が動いた 街のケーキ店「看板商品」開発の裏側(1/4 ページ)
物価高でぜいたく品に分類されるケーキの需要が落ち、洋菓子店の倒産が増加している。愛知県の街のケーキ店も厳しい状態だったが、そこから約2年で三越での新商品販売を実現した。何が起こったのか?
「街の洋菓子店」の倒産が急増している。2024年度の倒産件数は51件に上り、これまで最も多かった2019年度(44件)を上回って過去最多を更新した。要因として、物価高や人件費、大手チェーンとの競争激化が挙げられる(参照:帝国データバンク「洋菓子店の倒産動向(2024年度)」)。
2025年11月に創業90周年を迎えた、老舗ケーキ店「ガトータツミヤ」(愛知県岡崎市)も数年前から物価高の影響を受けていた。
同店の代表でパティシエの山本和典氏は「1人当たりの購入個数は減りましたね。例えば、これまでケーキは誕生日などの特別な日だけでなく、日常のおやつとしても購入されていたのですが、近年はフィナンシェなどのお手ごろ価格なもので我慢するという傾向が強まってきたように感じます」と振り返る。
年々激しさを増す「物価高」という逆風に対応するために、山本氏は2024年に看板商品の開発を決意した。実はこれまでも店の顔となる商品の開発や販路の拡大に挑戦してきたが、単発で終わるケースが多く、既存商品の購入や実店舗への来店につなげることができていなかった。
看板商品開発に当たって山本氏は、店の中に眠っている強みがないかを見つめ直すことにした。そこで浮かび上がったのが、長年使い続けてきた「バタークリーム」だった。同氏が密かに自信を持っていたこのバタークリームを主役に据え、外部機関からアドバイスをもらいながら、半年の開発期間を経て新商品「バターサンドのバタークリームだけいっとく?」を開発した。
その名の通り、バターサンドのクリーム部分だけを楽しめるスイーツだ。価格は、1箱12個入り(6種類×2個ずつ)で3600円(税抜き)に設定。2025年2月にEC限定で販売を開始し、1カ月で50箱を売り上げた。
さらに注目すべきは、ECでの新商品発売前に、名古屋栄三越への出店が決まっていた点だ。新商品の販売実績がないのはもちろん、過去に出店経験もない中で、有名百貨店での取り扱いが決まるのは珍しい。
街のケーキ店はどのように看板商品を開発し、三越という強力な販路や新しいファンの獲得を実現できたのか。
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