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販売実績ゼロなのに、三越が動いた 街のケーキ店「看板商品」開発の裏側(4/4 ページ)

物価高でぜいたく品に分類されるケーキの需要が落ち、洋菓子店の倒産が増加している。愛知県の街のケーキ店も厳しい状態だったが、そこから約2年で三越での新商品販売を実現した。何が起こったのか?

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商品発売前なのに、三越への出店決定 なぜ?

 三越への出店は、思いがけない会話から決まった。山本氏は三越の外商顧客(年間の購入金額が多い顧客)で、プライベートで外商担当と話す中で「バターの新商品があるのですが、どうでしょうか?」と相談したことがきっかけだったという。


特招会のパンフレット(画像:ガトータツミヤ提供)

 すぐに外商担当を経由して食品部の担当者が紹介された。「担当者さんとの打ち合わせで、商品を食べてもらってもいないのに、三越さんと取引する話が成立しました」と、山本氏は振り返る。2024年11月のことだ。

 新商品の発売前から三越での取り扱いが決まるという異例の事態だった。その後、2025年2月にECで販売を開始。三越デビューはそこから2カ月後の同年4月。外商顧客向けの招待制イベント「お得意様特別ご招待会」(以下、特招会)への出店を依頼された。

 「特招会ではいろいろな高級商品が販売されているのですが、われわれの商品は比較的手ごろな価格でした。『せっかく来たんだから何か買っていこうかな』という需要にマッチしたのか、好評でした。新商品のバタークリームは、試食してもらうと、『じゃあ5箱ください』という感じで購入いただきました」

 特招会には5日間出店し、1日の売り上げは8万〜10万円に上った。特招会での反響もあり、2025年11月には食品フロアの一角に期間限定で7日間出店することになった。立地的に集客が困難な場所といわれていたが、ご当地の土産を探しているお客さんの食いつきが良く、「10箱ください」「20箱欲しい」というお客もいたという。

 「そんなに需要があると思っていなくて、十分な商品数を用意していなかったんですよね。『すみません。数が足りなくて』と、お断りすることも多かったです。観光土産だけでなく、法事とかで大人数が集まる用事があって、その帰りに持たせる手土産として地元の商品を用意したいという需要があることも分かりました」(山本氏)


三越出店時の様子(画像:ガトータツミヤ提供)

 箱だけでなく、1個単位でも購入できるようにした結果、7日間の売り上げは約52万円に上った。バタークリームを試食した人の半分以上が購入したという。「過去、同じ場所に出店した和洋菓子店の1日の平均売り上げが2万〜3万円だったと聞いたので、ある程度結果は残せたかなと思います」(山本氏)

 今後も名古屋栄三越では年2回ほど出店する予定だという。今年5月の大型連休には、名古屋市内の「星ヶ丘三越」への出店も決まっている。

 三越を通じて、消費者とオフラインでの接点作りができた。ECはどうだったのか。山本氏は「発売時はまずまずの滑り出しだった」と振り返る。

 「オカビズさんのサポートもあり、発売1カ月で50箱ほど売れました。しかし、現在は少々伸び悩んでいます。ECでは1箱単位での販売になるので、味が6種類固定で選べないんですよね。今後は、そこのバランスを調整しようかと考えています。現在販売している6種類には含まれていないのですが、プレーン味が三越や店頭でテスト販売した際に人気でした。抹茶などの風味が失われやすい商品を季節限定にして、プレーンを入れるなど工夫していきたいです」(山本氏)


ガトータツミヤ自慢のバタークリーム(画像:ガトータツミヤ提供)

 「バターサンドのバタークリームだけいっとく?」の今後の目標について山本氏は、以下のように話した。

 「クオリティーを落とさず、無理なく作れる量が月300箱かなと思います。それが直近の目標販売数です。地元のケーキ店という顔はこれからも持ち続けたい。それに加えて、ECでオリジナルの商品を販売するという2軸が理想。そこを目指していきたいです」

 今やケーキはぜいたく品に分類され、物価高の影響を真正面から受けている。廃業する洋菓子店も増えている中で、ガトータツミヤは自らの強みを起点にした商品づくりで、新しい可能性を切り開こうとしている。

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