育休明けに突然「広報→DX担当」に?! IT未経験の自治体職員はどう第一歩を踏み出したのか(2/2 ページ)
デジタル庁が運営する「デジタル改革共創プラットフォーム」が、自治体でDXを担当する職員の心強い味方となっている。実際の活用事例をもとに本プラットフォームの価値をひもとく。
オープンデータ、窓口DX――全国の知見が悩みを解決
小さな疑問や悩みを誰かに相談したいと思っていた池澤氏にとって、誰でも気軽に質問などを投稿できる共創PFは魅力的だった。
過去の投稿をさかのぼって情報を集め、業務に必要な知識を学んでいった。
「自治体には、保有する公共データを国民や企業が利用しやすい形で公開する『オープンデータ』が求められています。当時、私はオープンデータの担当をしていましたが、知識がゼロの状態だったので『そもそもオープンデータとは何か』という基礎から、他の自治体ではどのように進めているのかなど、投稿を検索して学びました」と池澤氏は振り返る。
市役所の窓口での手続きにおける住民と職員の負担を減らす“窓口DX”の推進も担当。市民目線で窓口サービスの課題を把握するために、職員に市民役として実際に手続きを体験してもらい、意見を聞く「窓口利用体験調査」を実施することにした。
「単に『理想の窓口はどのようなものか』を質問しても『意見を言っても反映されないのでは』などと考え、職員から本音が出てきにくいのではないかと懸念していました」
形式的な意見ではなく率直な気付きを引き出すためには、どのような質問を投げかけるとよいのか迷った池澤氏は、共創PFで相談。すると、既に窓口DXを進めていた他の自治体職員から、経験に基づいた具体的なアドバイスが集まった。それらのアドバイスを反映したことで、調査の質が高まったという。
現場の担当者が本当に知りたい情報とは?
他の自治体に意見を聞く場合、従来は県内の近隣自治体の担当者に電話やメールでヒアリングをしていた。しかし、自治体の業務改善では、人口規模や産業構造が似ている事例が参考になるケースが多いため、県内だけでは当てはまる先行事例が見つからないことも多かった。この点でも共創PFは全国の1495の市町村が参加しているため、条件にあった事例を探しやすい。
「中央省庁が発表している事例集やメディアの記事などでは、成功事例や優秀な自治体の例が取り上げられがちです。ただ、私たち現場の職員が本当に知りたいのは、プロジェクトの最初のステップや悩み、当時の懸念、失敗事例などの試行錯誤のプロセスです。共創PFでは飾らない本音やリアルな悩みが共有されていることが、大きな価値だと感じます」
前例がないから動けない、相談先がない――そうした“自治体DXあるある”を減らしていく上で、共創PFのような仕組みの存在は大きい。
全国の知見にすぐにアクセスできる環境が、自治体DXの進化を一段早めている。
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