「黒字リストラ」の裏で進む必要な人材の選別──AI時代に「食いっぱぐれない」キャリア戦略:AI・DX時代に“勝てる組織”(4/4 ページ)
黒字企業によるリストラが相次ぐなど、日本の労働市場では静かな構造転換が進んでいます。生成AIの普及は、業務効率化にとどまらず、「どの人材に投資するか」という企業の判断基準そのものを変えつつあります。本稿ではデータや事例を基に、その変化の実態とAI時代に求められるキャリア戦略を整理します。
AI時代に有効な「3つのキャリア指針」
以上の環境変化を踏まえ、これからのビジネスパーソンが取るべきキャリア戦略は、以下の3点に集約されます。
1.「デスクで完結する仕事」からの卒業
PCの前から動かないで終わる業務や、情報を整理して体裁を整えるだけの仕事は、AIによる代替リスクが最も高い領域です。逆に「現場に足を運ばなければ得られない一次情報」を取りに行ける人材の価値は相対的に高まります。泥臭い現場の情報を持ち、それをデジタルに接続できる人材にこそ、AI時代の勝機があります。
2.「判断」の責任を引き受ける
AIは無数の選択肢を提示してくれますが、最終的な意思決定までは代行してくれません。「この企画を採用する」「このリスクを許容する」といったはんこを押す行為、すなわち「判断と責任」の重さこそが、人間の報酬の源泉となります。
3.エッセンシャル領域への「染み出し」
現在の職種を変えずとも、関わる業界やプロジェクトをずらすことは可能です。金融であればFinTechだけでなく農業金融へ、ITであれば社内システムだけでなく工場のIoTへ。「需要が増大する現場」×「自身のデジタルスキル」の掛け算が成立する領域へ、キャリアの軸足を少しずつ移していくことが、中長期的な安定につながります。
「ホワイトカラー余剰、エッセンシャルワーカー不足」、この歪みは見方を変えれば大きなチャンスでもあります。オフィスの中での競争から視点を転じ、汗をかいて現場の課題解決に挑む。そうした「現場起点のデジタル人材」こそが、これからの主役になると筆者は確信しています。
会社がキャリアを守ってくれる時代は終わりました。自らの足で現場に行き、自らの頭で考え、市場価値を築いていく。その能動的な姿勢こそが、不確実な時代を生き抜くための武器となるはずです。
著者紹介:小出翔
GrowNexus代表取締役
デロイトトーマツコンサルティングにて14年間のコンサルティング経験を経て、GrowNexusを設立。
多様な業界の大手企業・官公庁・自治体に対し、人事・組織改革、新規事業創出、業務効率化の戦略策定から実行・伴走支援まで幅広く手掛ける。近年はDX推進に加え、デジタル人材戦略から採用・配置・育成・評価・処遇に至る一貫した支援を実施。経産省・IPAのデジタルスキル標準策定も支援しており、デジタル時代の人材・リスキリングに特に強みを持つ。GrowNexusの代表として、伴走・成長支援型のサービスと、テクノロジーを融合した新しいサービスを提供。
著書に『未来のキャリアを創る リスキリング』『地銀”生き残り”のビジネスモデル 5つの類型とそれらを支えるDX』『働き方改革 7つのデザイン』他。
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