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調査は減ったのに、追徴は倍増 “AI税務調査”時代に経理が意識すべき2つのポイント(2/3 ページ)

電子帳簿保存法やインボイス制度への対応に追われ、「やるべきことはやった」と胸をなで下ろしてはいないだろうか。いま、税務行政はAIを活用し、申告データを横断的に分析する新たな段階へと進んでいる。いま備えるべき経理DXの本質を解説する。

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“見逃されない”時代、鍵は「ガバナンスの強さ」

 企業はこのAI税務調査にどのように対応していくべきか。その鍵は「ガバナンスの強さ」にあるという。

 不正リスクとガバナンス強度、そして税務調査の頻度には明確な相関があると袖山所長は解説する。AIが企業のデータを分析して調査対象を選定する以上、データの透明性が高い企業ほどリスクは低く評価されるからだ。では、コンプライアンスリスクが高い企業と低い企業では、いったい何が違うのか。

 「属人性の高い業務処理や恣意(しい)性が排除されない処理がある。また、正当性が担保できず、事後検証もできない会計システムが導入されているような企業は、コンプライアンスリスクが高いと言えるでしょう」

 裏を返せば、データ活用によって業務処理の正確性と適正性が担保されており、帳簿の作成過程が全て記録され、事後検証が可能な会計システムが導入されていれば、帳簿・決算書の信頼性が確保され「調査の必要度が低い」と判定される可能性も高まる。

 これは正しい処理を積み重ねている企業が、正当に評価される仕組みが整ってきている現れでもある。

ガバナンス強化を実現する2つの制度

 具体的にどうしたらガバナンスを高められるのだろうか。

 ガバナンスを高める制度の一つが「デジタルシームレス制度」(特定電子計算機処理システム)だ。これは、取引データの授受から会計処理までをデータで一気通貫につなぎ、一定の要件を満たした場合に電子帳簿保存法上の加重措置の適用関係が変わる仕組みを指す。

 前提として、電子帳簿保存法にはデータ改ざんに対する加重措置がある。スキャナ保存データや電子取引データを改ざんして経費計上するなどの不正が発覚した場合、通常の重加算税にさらに10%が上乗せされる。デジタルシームレス制度を導入すれば、この加重措置の適用が除外される。

 デジタルシームレス制度として認められるための要件は3つある。第1に、取引先とのデータのやり取りにEDI(電子データ交換)やCSV、Peppol(ペポル:デジタルインボイスの国際規格)、全銀EDI(ZEDI)などのデータ形式を使うこと。第2に、受け取ったデータを会計システムや業務システムに人の手を介さず自動で取り込むこと。第3に、取引データと仕訳データのひも付けを確保することだ。

 メリットは加重措置の除外だけではない。この仕組みが導入されていれば、訂正・削除の履歴も全て残るため、処理の正当性を、根拠をもって示すことができる。つまり、データ改ざんの疑いをかけられること自体が少なくなるのだ。

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デジタルシームレス制度は、人の手を介さないデータ連携と履歴管理により帳簿の信頼性を高め、改ざんリスクへの備えを強化する(提供:ゲッティイメージズ)

 ガバナンス強化のもう一つの柱が「優良電子帳簿」の要件を満たすことだ。これは、電子帳簿保存法上、通常の「一般電子帳簿」よりも厳格な保存・管理要件を満たした帳簿区分を指す。

 電子帳簿保存法の改正で、帳簿の電子保存要件は大幅に緩和された。しかし袖山所長は、緩和によって生じた課題も指摘する。規制緩和後の「一般電子帳簿」は、システムで作成しデータで提示できれば要件を満たす。しかし、帳簿データの訂正・削除履歴が残るとは限らない。データが事後的に書き換えられても把握できず、帳簿の信頼性が低下する恐れがある。

 優良電子帳簿は、この課題に対応するものだ。優良電子帳簿として認められるには、さまざまな要件を満たす必要がある。例えば、全てのシステムで訂正・削除の履歴が確認できることや、上流の業務システムと会計システムの間でデータがどのように転記されたかを追跡できる、相互関連性の確保が求められている。

 ハードルはあるが、優良電子帳簿を導入すれば、過少申告加算税が5%軽減される。加えて袖山所長は、税額面のメリット以上の価値を力説した。

 「導入によって、帳簿や決算書の信頼性が高まります。ひいては、税務申告が正しく作成されている会社だという信頼度が上がるのが、優良電子帳簿なのです」

 なお、こうした取り組みを客観的に示す第三者認証も始まる。日本文書情報マネジメント協会(JIIMA)は、デジタルシームレスソフト認証を2026年1月に開始する。優良電子帳簿を導入した企業を認証する「ユーザ認証」(Jマーク)も、2026年中に申請受付が始まる見込みだ。取引先や税務当局に対して自社のガバナンス水準を示す手段になる。

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