調査は減ったのに、追徴は倍増 “AI税務調査”時代に経理が意識すべき2つのポイント(3/3 ページ)
電子帳簿保存法やインボイス制度への対応に追われ、「やるべきことはやった」と胸をなで下ろしてはいないだろうか。いま、税務行政はAIを活用し、申告データを横断的に分析する新たな段階へと進んでいる。いま備えるべき経理DXの本質を解説する。
経理DXの成熟度が企業評価を左右する
デジタルシームレスと優良電子帳簿。この2つの制度は、帳簿の信頼性を高める有効な手段だ。ただし袖山所長は、制度の導入だけでは十分ではないと指摘する。経理部門が扱う請求書の「前段階」にも目を向ける必要があるというのだ。
請求書が届く前には、見積もり、発注、納品、検収といった業務プロセスがある。袖山所長は、経理部門の役割を次のように語る。
「請求書の処理だけが経理部門の業務ではありません。企業の業務がきちんと行われているかどうかを確認する。経理こそ、その砦となる部門なのです」
請求書の書式や計算が正しいかを確認するだけでは、こうした上流工程の適正性までは担保できない。それぞれの段階できちんと処理が行われているかを検証できて初めて、経理部門は最後の砦としての役割を果たせる。
そこで袖山所長が提案するのは、業務システムと会計システムを連携させたワークフローの統一だ。取引ごとに見積書から請求書までの関連書類を紐付けて管理できれば、取引の正当性を一気通貫で検証できるようになる。
加えて、自社内の改革にとどまらず、取引先を巻き込んだデジタル化の重要性も説いた。EDIやCSV、Peppolなどのデータ形式で取引情報をやり取りし、システムから発行し、システムで受領する。人の手を介さないデータ処理が実現すれば、デジタルシームレス制度の要件も満たせる。
経理業務のDXは、単なる法令対応でも目先の業務効率化でもない。業務全体をデジタルで一気通貫させることで、企業のガバナンスそのものを高める取り組みだ。
電子帳簿保存法やインボイス制度への対応を済ませたものの、次の一手に迷う企業にとって、業務プロセス全体のデジタル化は、単なる法令対応の延長ではなく、経営戦略として再定義する段階になっている。
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