Adobe CEO退任へ AI競争の中で株価下落、投資家の懸念とは
AdobeのCEO退任発表を受け、AI時代の戦略を巡る投資家の懸念が再燃した。AIの進化はデザインソフト市場の競争環境を大きく変えつつある。
米Adobeは、長年CEOを務めてきたシャンタヌ・ナラヤンCEOが、後継者の任命後に退任する方針だと発表した。
発表を受け、AIによる市場変化への対応を迫られている同社の戦略に対する懸念が再燃した。株価は時間外取引で7%超下落した。
ナラヤンCEOは18年間Adobeを率いた。在任中、同氏はPhotoshop、Illustrator、Premiere Pro、InDesignといった同社の主力ソフトウェアを世界中のクリエイターに広く使われる定番ソフトへと成長させた。
同社によると、同氏は次期CEOを支援するため取締役会長として引き続き在任する。しかし、このCEO退任の発表は、AdobeがAIへの取り組みを強化し、提携や買収の検討を通じて業界でのリード拡大を目指している時期と重なったことで、同社の先行きに不透明感をもたらす可能性がある。
AIの進化で揺らぐAdobeの優位性
Adobeは同時に四半期決算も発表した。総売上高およびサブスクリプション部門はいずれも2桁成長を記録し、同社製品群に対する堅調な支出が続いていることを示した。
現在、同社はソフトウェア業界の変化に直面している。AIの進化により、デザイン領域への参入障壁が低下しており、AI技術を積極的に採用する新興企業によって、同社の業界における支配的地位が脅かされつつある。
米調査会社eMarketerのアナリスト、グレース・ハーモン氏は「クリエイティブおよび法人向けAIの分野で競争が激化する中、投資家は次期リーダーが規律ある事業運営と積極的なAI投資のバランスを維持できるかどうかに注目するだろう」と述べている。
また、新しい自動化AIツールやAIエージェントの台頭に伴い、懸念も高まっている。多くの関係者が、これらが従来のソフトウェアサブスクリプションモデルを揺るがし、より迅速かつ低コストな制作手法へと置き換わるのではないかと懸念している。
Adobeは自社製品群を強化するためAIに大規模な投資をしてきたが「収益化の時期や投資回収への不透明感に対する投資家の懐疑的な見方が、株価下落の要因となった可能性がある」とハーモン氏は指摘した。
Adobeの株価は2026年に入って約22%下落している。2025年にも21%超下落しており、同社のAI戦略および将来見通しに対する投資家の警戒心が反映されている。
同社は第2四半期の売上高を64億3000万ドルから64億8000万ドルと予測した。ロンドン証券取引所グループ(LSEG)がまとめた市場予想は64億3000万ドルとなっている。
第1四半期の売上高は64億ドルとなり、市場予想の62億8000万ドルを上回った。調整後1株利益は6.06ドルで、市場予想の5.87ドルを上回った。クリエイティブおよびマーケティング専門家向けサブスクリプションの売上高は43億9000万ドルとなり、市場予想の43億2000万ドルを上回った。

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