ニデック不正に見る“恐怖の連鎖” 永守氏に「できません」と言えなかった組織の末路:スピン経済の歩き方(6/6 ページ)
第三者委員会により公表されたニデックの調査報告書。その中身を見ていると、コテコテの日本企業のまま、海外企業をまねようとする企業特有の闇が見えてくる。それは……。
「集団欠陥」の典型例
「過度な業績プレッシャー」も同じだ。社員をゴリゴリに締め付けて、高い目標をクリアさせれば組織は成長できる。しかし、社員は機械ではなく人間なので、プレッシャーを与え続けるとどんどんすり減って、心が折れる。パフォーマンスが低下する者も増えて、メンタルヘルスに問題が起きて離職する者もあらわれる。その中でも最も深刻な「弊害」は、社員の倫理観やモラルが崩れてしまうことだ。
組織に長くしがみつきたい人は、組織内で逆らうことのできない絶対権力者にいびられると、とにもかくにも今すぐこの場から逃げ出したいと考え、思考停止に陥る。そして、この苦しみから逃れるためならばと、どんな不正にも手を染めてしまう。周囲も絶対権力者が怖いので見て見ぬふりをする。むしろ、そのやり方をまねることで、不正が組織内に容易に広がっていく。
こうして恐怖に覆われた人々のモラルが崩壊していくことを、心理学では「集団欠陥」というそうだ。
- ビッグモーター「世間の常識なんやそれ」で数字を追求 元社員が語る「集団心理」のワナ(AERA DIGITAL 2023年12月7日)
その代表的な例が旧ビッグモーターである。同社にも、小さな中古車販売店からテレビCMをバンバン打つほど業界ナンバーワン企業に成長させたことで「カリスマ創業者」として持ち上げられた兼重宏行会長がいた。
絶対的な権力を握る兼重氏や幹部から「過剰なノルマ」を課され、社員たちは震え上がりながら働いていた。結果を出せないと恫喝や叱責を受けるため、それを避けようとして保険金の不正請求や、街路樹を勝手に引き抜くといった、常識では考えられない行為に手を染めていった。
永守重信氏と兼重宏行氏。一代で個人商店から巨大企業を築き上げてきた強烈なリーダーシップ、経営手腕、カリスマ性という点では、重なるところのある2人がともに「過度な業績プレッシャー」で撃沈した。
社員に高い目標を掲げ、時に厳しく叱責して会社を成長させてきた「プチ永守」ともいうべき全国の経営者は、そろそろ経営手法を見直さなければ、痛い目に遭うかもしれない。
窪田順生氏のプロフィール:
テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経て現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌へ寄稿する傍ら、報道対策アドバイザーとしても活動。これまで300件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行う。窪田順生のYouTube『地下メンタリーチャンネル』
近著に愛国報道の問題点を検証した『「愛国」という名の亡国論 「日本人すごい」が日本をダメにする』(さくら舎)。このほか、本連載の人気記事をまとめた『バカ売れ法則大全』(共著/SBクリエイティブ)、『スピンドクター "モミ消しのプロ"が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)など。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受
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