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「トイレの大・小まで記録を指示」は適正か過剰か 労務管理の境界線を弁護士に聞く(2/2 ページ)

メーカーの子会社で、特定の社員に勤務中の離席を分単位で記録させ、トイレ利用についても「大・小」や所要時間の記載を求めていた事例が明らかになった。こうした管理は適正な労務管理と言えるのか、それとも過剰な監視に当たるのか。判断のポイントを佐藤みのり弁護士に聞いた。

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企業に求められる“適切な対応”とは

――報道によると、今回の事例では該当社員が会社の相談窓口に「苦痛だ」と相談したところ「窓口は、正しいか正しくないを判断する立場にない」との返信があったといいます。この回答に問題点はありますか。

 一般的に会社の相談窓口が従業員から職場の対応について苦痛を訴えられたり、相談を受けたりした場合、まずは相談者の話を誠実な姿勢で聴き取ることが必要です。

 ただし、相談者が感情的になり、相談窓口の従業員に対して、その場で評価を求めてくるといったことも起こり得ます。そのような場合には、相談窓口の従業員は、相談者に対し「正しいか正しくないかを判断する立場にない」ということを伝えるべき場面もあるでしょう。

 会社は、相談を受けたら、組織的に事実確認と評価をする体制を整える必要があります。相談者の感情が特定の従業員に向かわないよう、相談窓口の従業員と、事実確認と評価をするメンバーを分けるなどの工夫も有効です。

――リモートワークの普及などで「見えない場所での業務管理」を課題とする企業もあります。現代の労務管理のガイドラインとはどうあるべきでしょうか。

 前提として、会社は従業員を指揮監督することができ、どのような方法や頻度で指揮監督するかは、会社側の裁量に委ねられています。しかし、その裁量にも限界があり、逸脱すれば違法になります。

 裁量の逸脱と言えるか否かについて、裁判所は経緯、目的、態様など、さまざまな要素を総合的に考慮して「社会通念」に照らして判断します。

 過剰な監視に当たるか適正な指揮監督に当たるかは、個別の事情によって異なるため、会社としては「業務上の必要性」と「指揮監督方法の相当性」の2つの視点から、個別の事情を総合的に考慮し、柔軟に対応していくことが求められているように思います。

 厳しい管理下に置かれた従業員は緊張状態に陥り、逆に仕事の効率が落ちてしまうこともあります。会社としては、管理の目的を常に意識して、従業員のやる気を引き出せるような環境を整えることが望ましいでしょう。

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必要性と相当性を踏まえ、個別事情に応じた適切な管理が求められる

――子会社でこのような問題が起こった際、親会社はどの程度の監督責任を負うのでしょうか。

 子会社でハラスメントなどの不祥事が起きたとき、親会社が監督していなかったとして、常に法的責任を負うわけではありません。

 過去に、グループ会社の親会社が相談窓口を設置しており、子会社の従業員がそこへ相談した事案で、親会社の対応が問題となった裁判があります。最高裁は、親会社が子会社の従業員に対し、直接指揮監督する関係にないことやコンプライアンス体制の内容などを踏まえ、相談に対応すべき子会社の義務を親会社が履行する立場にあったとは言えないなどとして、個別事案のさまざまな事情を踏まえた上で、親会社の責任を否定しました。

 子会社の不祥事について、親会社が責任を負うのか、どのような責任を負うのかは、事案によって異なるものと思われます。

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