【あなたの会社は大丈夫?】施行から3カ月、「取適法」で企業が直面する"想定外の壁"(3/3 ページ)
2026年1月、中小企業の価格転嫁を後押しする「中小受託取引適正化法」(取適法)が施行された。
勧告が相次ぐ「取引条件の不備」
松田氏は、もう一つの実務課題として取引条件の明示と不当な取引行為の関係を取り上げた。取適法では委託の際に、取引内容や納期、代金の額と支払期日などの条件を書面で明示する義務がある。納品から60日以内の支払期日設定(遅延利息年率14.6%)も定められている。
しかし松田氏は、必ずしも実態はそうなっていない、と指摘する。
「業界によっては、具体的な取引内容の合意やその後の変更をあいまいにしているところも少なくありません。取引条件が不明確だと、受託側からすれば『受けたのはここまでだ』と明確に言えず、委託側もどこまで頼んでいいか分からない。結果として『ついでにこれもやってよ』ということが起きてしまいます」
例えば、自動車のタイヤ交換や板金塗装を委託していた企業の事例がある。当初の委託内容には含まれていない自動車約280台の引き取り・引き渡しの運送を、無償で受託側に実施させていた。報酬に含める協議もなかった。年に1回程度しか発注がない古い製品の金型を、保管コストを受託側に負わせたまま山積みにしている点も問題視された。
「契約の可視化」が起点に
調査結果と専門家の解説から浮かび上がるのは、契約情報の管理と可視化こそが取適法対応の起点になるということだ。
受注側では、書面で取引条件を押さえられているかどうかが価格協議の明暗を分けていた。発注側では、対象企業の特定に必要な情報収集が現場の負荷になっていた。
最後に松田氏は今回の取適法にとどまらない広がりにも言及した。
「今年中に取適法以外の分野にも同じ問題が波及していくことが想定されます。取引適正化の流れは今後さらに広がっていくでしょう」
日々の取引において、契約条件を正しく押さえ、変更の経緯も含めて管理できる仕組みをどう構築するか。その積み重ねこそが、法改正を「形だけの対応」で終わらせないための第一歩となるのかもしれない。
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