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病院内のカフェ、なぜ「タリーズ」が多い? 100店舗展開を支える運営戦略(2/4 ページ)

タリーズは4月、100店舗目となる病院内店舗をオープンした。他のカフェチェーンの病院内出店は30〜50店規模にとどまるが、なぜタリーズが抜きんでているのか。タリーズが病院内に出店する理由を取材した。

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現場発で磨く「病院仕様」の店づくり

 タリーズでは、店舗運営や接客に関する好事例を全店で共有している。加えて、病院内店舗では、病院内ならではの課題や改善案を話し合うミーティングを定期的に開催。店長や責任者が集まり、「こういう声があった」「こうしたらもっと使いやすくなるのでは」といった意見を持ち寄り、必要に応じてマーケティング部門や設計部門に共有する。

 実際に、現場発の改善提案から生まれた工夫は多い。

 例えば、車椅子の利用者がレジカウンターに近付いて注文しやすいよう、カウンターの足元部分は膝が入る程度にスペースをへこませている。通路幅にもゆとりを持たせるほか、点滴や杖をかけられる特注の椅子、角がないテーブルなど店内設備にも配慮する。


商品を受け取るカウンターも通常よりも低めの仕様。角を丸くし、手すりも設置している

 病院という場所柄を踏まえた細かな工夫もある。同社は通常、赤色のバリスタマシンを導入しているが、血を連想させるため、病院内店舗では白やシルバーを採用。「フェロー」と呼ばれるカフェスタッフが通常着用するエプロンも、通常店舗より明るめのブラウンに変更している。

 患者だけでなく、病院職員にとっても利用しやすい設計を取り入れているのも特徴の一つだ。患者と職員それぞれが気兼ねなく過ごせるよう、職員専用エリアを設けたり、白衣を掛けられるハンガーを設置したりする店舗もある。

 こうした配慮は接客面にも及ぶ。タリーズは注文した商品をカウンターで受け取るセルフスタイルを採用しているが、病院内店舗では体の不自由な利用者のために席まで商品を運ぶ。長期間入院している患者のために、店頭には季節の花を模した折り紙を飾ることもある。


コロナ禍の際、タリーズのフェローが医療従事者へ焼き菓子セットとともに送った手紙の花束

 レジ前の焼菓子を「ご一緒にいかがですか?」と勧める場面でも、糖分やカロリーを制限している患者がいることを念頭に、様子を見ながら声がけをするかどうか判断する。

 また、再来店を促すニュアンスは病院という場にはそぐわないという考えから、「またお越しください」の代わりに「ごゆっくりお過ごしください」と伝えることを基本としている。

 デカフェ(カフェイン95%以上除去)を病院内店舗で標準展開しているのも、現場からの声がきっかけだ。マウンテンウォーター製法(生豆を水に浸してカフェインを除去する技術)を用いたタリーズのデカフェは「通常のコーヒーと変わらない味」と院内での評価が高く、カフェイン摂取を制限されている患者にも提供できる。

 デカフェの提供を始めたきっかけは、妊婦からのニーズだったが、現在では高齢者の就寝前需要に加え、ギフト商品と一緒に購入するケースも増えてきたという。

 「患者さま、病院職員の方、それぞれの立場になってみないと気付かないことがあります。ですが、病院だからという理由で特別なことをしている感覚はありません。ただ、そのお店に来てくださるお客さまにとって何が必要なのかを考えた結果、このような形になっていきました」(定常氏)

 タリーズは店内設備や空間設計、接客に至るまで、病院という特殊な環境に合わせた店づくりを進めてきた。その積み重ねが、病院ごとのニーズに合わせた店舗設計を可能にし、次の出店にもつながっている。


待ち時間を有意義に過ごせるよう、一部店舗では診察の呼び出しモニターを設置している

 病院内店舗での運営実績を着実に積み上げてきたタリーズには、病院側からの出店オファーに加え、運営事業者の見直し時にも引き合いが多い。しかし、オファーがあるからといって全てに出店するわけではないという。

 一般店舗の出店時と同様に、病床数や職員数、医科大学や看護学校といった関連施設の有無、周辺人口などの商圏調査を実施。立地や想定利用者数などから、事業として成立するかを見極めた上で出店可否を判断している。

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