「AIデータセンターの電力需要が急増」はホント? 発電大手Jパワー社長が明かした“報道との温度差”
AIブームを受けて、データセンターの電力需要が急増しているといわれる。電力関連企業は対応に追われているかと思いきや、実態は異なるようだ。発電大手J-POWERの社長が実態を語った。
「生成AIの需要が増加し、AI処理を担うデータセンターの電力消費が急増する」――こうした見解が広がっている。
国際エネルギー機関(IEA)の報告書『Energy and AI』は、世界のデータセンターの電力消費量は、2030年に約9450億キロワット時(kWh)に達すると推計する。これは、日本の年間電力消費量を上回る量だという(資源エネルギー庁の資料によると、2024年度の需要電力量は8524億kWhだった)。
英Gartnerは「AI最適化サーバの急速な普及が、データセンターの電力消費の増大を加速させている」と指摘する。AIサーバは、一般的なサーバに比べて消費電力量が大きい。GPU(画像処理半導体)は発熱量が大きいため、冷却にも多くの電力を必要とするからだ。
電力需要の高まりを受けて、電力関連企業は対応に追われているのかと思いきや、実態は異なるようだ。発電事業で国内上位のシェアを持つ電源開発(J-POWER)の加藤英彰代表取締役社長が、取材に応じた。
「AIデータセンターの電力需要が急増」の実態は?
J-POWERは、国内100カ所以上に発電所を置き、東京電力などの電力会社に電気を販売している。石炭火力発電で国内シェア上位に位置するほか、水力・風力発電で国内シェア2位を誇るなど再生可能エネルギー(再エネ)発電にも力を入れている。
生成AIブーム起因の電気需要について、加藤社長は発電事業者の視点から次のように話した。
「生成AIの利用急増で、データセンターの建設計画がめじろ押しになっていると思う。電力需要の伸びは各所で期待されている。首都圏や関西だけでなく、北海道や九州など地方でもニーズがある」
AI処理は電力を大量に消費することから、環境負荷を低減させるために再エネを主要電源とする「グリーンデータセンター」が注目されている。再エネ事業を手掛けるJ-POWERのビジネスチャンスになるが、加藤社長は「足元で『こういう計画がある』と伝えられるものは特にない」と明かす。
「データセンターの電力需要が急増するという報道があるが、その需要がいつ立ち上がるのか見極められていない。(電力会社の送配電部門に対して)データセンターへの送電線の接続依頼が多く届いていると聞いているが、それが実際のデータセンター建設にいつつながるのか確証があるものは少ない」(加藤社長)
日立製作所らとタッグで目指す「分散型AIデータセンター」
電力会社やデータセンターに電力を供給するだけでなく、J-POWER自身も「分散型AIデータセンター」の構築に向けて動き出している。再エネ発電所が多く立地する複数地域にデータセンターを建設し、仮想化技術(複数の拠点を結んで、1つの大型データセンターのように扱う仕組み)による一体運用を目指す。
電力需給や電力価格に応じて、適切なデータセンターを割り当てる構想だ。日立製作所や東日本旅客鉄道、JR西日本光ネットワーク(大阪府吹田市)など複数の企業とともに実証実験を行うと4月22日に発表した。
「社会インフラや公共部門などに関わるデータは、国産データセンターで握るべきだ。われわれのような発電事業者と、国内の大手企業が共同で取り組むことに大きな意義がある」(加藤社長)
1952年、戦後復興期の電力不足を解消するために設立されたJ-POWER。“AI時代”に突入し、電力需要が再び増えると予想される今、同社はどのような役割を果たすのか。
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